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【グルメの迷宮】カオスな路地の仙郷で精進料理◆中野[香林房]

11/10/17 |散歩の達人編集部より|

 中野駅前と言えば、やっぱり「中野サンモール商店街」ではなかろうか。北口に出ればすぐ目に着く、ビルの狭間の巨大アーケードである。そしてその商店街の突き当たりにあるのが、かの「中野ブロードウェイ」である。

 以前は普通の商業雑居ビルだったが、老築化とともに店の入れ替えが始まり、古本マンガ書店「まんだらけ」店がブレイクしたことが引き金となり、建物内にサブカル系の店がじわじわ増えて現在にいたっている。

  オタクの聖地などと呼ばれることもあるけれど、正真正銘オタクの聖地である秋葉原と比べると、小規模だし、秋葉原がゲーム・アニメ系メインなのに対してこちらはマンガ中心と、マニアの間では棲み分けがなされている。

 また、高級腕時計専門店ジャックロードとか、ロックファッション専門店とか、地下1階は激安の生鮮食料品コーナーだったりと、おたく一色でもない。その分より雑多で、じっくりさまよい歩く程に味がしみ出る。

  地下1階〜4階までが商業スペース(その上は住居)で、独特のオーラを放つ小ぶりなお店がたっぷりあちこちに並んでいる。さながら立体的に積み重ねた路地をぶらついている感じはなんとも独特だ。

 中野ブロードウェイは、通り抜けになっている1階中央通路の脇に、エスカレーターが2カ所設置されている。便利なのだけど、どちらも3階直通なので、慣れないと「ここ何階だっけ?」と首をかしげ、ことさら楽しくさまい歩くことになる。

  くわえて慣れないとスルーしがちなのが、2階スペースである。エスカレーターで3階に登ってしまうとつい見逃してしまうのだ。小さな渡り廊下が架かっていたり、これまた味のある楽しいエリアなのだけど、喫茶・飲食店が幾つか入居しているのが特徴となっている。細い通路ぞいにレトロな飲食店が点在する様は、昭和の残照である。

 この通路の駅とは正反対の北端の方に足をのばすと、ふいに見つかるのが「香林房」である。何というか、不思議なほど静かな、落ち着いたたたずまいである。

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 中はL字方のカウンターのみの9席。常連さんが多いようだ。かといってフリの客にもオープンで、ゆるりと入り込める。端の席にこしかけて、さて何にしようかな。

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 言い忘れたけれど、ここは家庭的な精進料理の店。それも台湾スタイルである。台湾には精進料理が、伝統的に根付いていて、文字通り、肉と魚は一切使わない。店をきりもりするのは、日本語無問題の年季の入った妙齢の女将。いろいろある中から、精進カツ定食を注文する。

  何せ一人でやっている店なので、混み出すと、ちょっと待つことになる。本でも持っていって悠然と構えているのがオススメである。

 待つことしばし。精進カツ定食がカウンター越しにやってきた。「おまちどうさま」

 見た目は、ていねいに作った家庭料理そのものである。

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 精進カツの他に、切り干し大根入りの卵焼きと、田楽風のタレがついた大きな焼きナス。それにご飯、おすまし、ザーサイといった構成。主役の精進カツ君は、コロッケ風で、家庭のお弁当に入っていそうな地味さである。なーに、味がよろしければいいのよと、まずは一口。

 

 ほほう。

 

 衣のしゃりしゃり感はイマイチなものの、なかなかいける。具の食感はカツというより練り物に近いか。正体はシイタケの茎を刻んで野菜を混ぜて揚げたものだそうで、カツというにはさすがにアレなのだけど、味付けが見事である。濃すぎず、薄すぎず、ソース等つけなくても十分に味わえる。経験とセンスの賜物であろう。ヘルシー志向の今の世なら、「精進カツ」というより「野菜カツ」とか真っ直ぐに言い切ってしまった方が、受け入れられやすいのではとか思ってしまう。余計なことなんですけどね。

 ほかの切り干し大根入りの卵焼きや、田楽風のタレも塩加減が絶妙の美味さであった。

 

 噛めば噛むほど味わいが増す、滋味に富んだ味。食後のさっぱりした感じも心地よい。

 中野ブロードウェイという異境の地で、カジュアルな仙人食を頂戴したような気持ちにさせられて店を出たのであった。

 

(写真・文=奥谷道草)

 

 

DATA 香林房

精進カツ定食1100円 中野区中野5-52-15 中野ブロードウェイ2F 電話03-3385-7005  営業時間11:30頃~15:30 17:00~(L.O.20:00) 日・第3土曜休