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【グルメの迷宮】台湾お礼参りの粥の道◆台中[十分粥道]

11/12/08 |散歩の達人編集部より|

  昨年に続き、台湾へ遠足に行ってしまった。当初、同じ異国に立て続けに行くつもりはなく、刺激を求めてひさびさにベトナムいいな、ポルトガルもよいぞ、北欧もハズせないわね等々、夢だけはイタズラに広がっていたのだけれども、あの未曾有の大震災に見舞われた我が国に、多額の義援金を集ってくれた台湾さまへ、お礼しに出かけたくなったのである。と言ったって、数日間ぶいぶい散歩して食い回るだけなんですけどね。 

 今回メインで巡ったのは、台中。

 九州大陸よりちょい小ぶりで、里芋型をした台湾は、南北にタテに延びていて、台中はそのほぼセンター北寄りに位置する。自宅から寄り道せず台中に訪れるのであれば、台北桃園国際空港から台湾新幹線・桃園駅に車で移動、乗車して2つ先の台中駅に向かうのが最短距離(空港から計80分ぐらい)。

 台湾新幹線・台中駅は、中心街から離れているので(横浜駅と新横浜駅の関係に近い)、隣接する在来線・新烏日駅に乗り換える。そうして3つ先の在来線・台中駅に降り立ち、着いたぞっ! とグリコポーズをとることをオススメしたい。大正時代、日本人建築家の設計で建てられた立派な駅舎が現役で、60〜70年代の日本の駅に降り立ったような、プチ・レトロな懐かしさが、ぐっと胸にこみ上げてくるのである。

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 ちなみに、ガイコクで電車を使うのは至難のワザだけど、台湾に限っては事情が違う。駅名も大陸みたいに省略漢字でないのでほぼ読めるし、きっぷの買い方と電車の種別さえ判れば(簡単)、各駅にひょいと乗って近隣の町をぶらつくなんてことが、日本人ならたらたらできる。一度味をしめると、にわか鉄チャン化すること確実の面白さだ。 

 台中の年間平均気温は23度ほど。暑すぎず寒すぎで具合いい。そして、都会すぎず田舎すぎずがさらにいい。

 視界を邪魔する高層ビルがまだ少なくて、見上げる空が心地よく広い。どことなく漂う南国気分の街中には、漢字だらけの大看板が競って建ち並び、その中に台中駅はじめ、日本植民地時代のレトロ建築と、アジア最大級の国立台湾美術館(無料!)や国立自然科学博物館、Hotel ONE台中などのモダン建築が点在している。ビジネス第一ではなくて、文化美術を重んじている様子が覗われる。

 また、街中に川と緑道が通っていて、よき息抜きポイントとなっているも散歩者には見逃せない。のんびりゆっくり散策する味は格別だ。

  格別な味といえば、料理がまた、たまらなくたまらないのである。

 暑い国は、料理の味付けが甘くなることがある。暑さによる体力の消耗を補うためで、長期滞在でもしないかぎり、ちょいくどく感じてしまう。体験から言って、台湾もやはり、味付けは風土に合わせて甘めの傾向がある。

 しかし、台中は違うんですねえ。食の都として知られているせいもあるのかないのか、若人向けの逢甲夜市という、ニッポンの竹下通りチックな、有名コッテリ屋台料理ゾーンもありますけど、捜してみれば品のいい、味付けあっさりめの料理店がそこそこ見つかるのだ。

 わかりやすいところだと在来線・台中駅から徒歩数分の所にある、広東料理の老舗「沁園春」のすばらしい小籠包。

 破れることのない薄い皮に包まれたジューシーな具のバランスときたらアナタもう。歴史を感じさせる広々とした店内も居心地バツグンときている。東京にも進出している、台北の某有名小籠包みたいに、現地でも行列なんてバブリーな事もまずない。ゆったり口福のひとときが味わえる。美味すぎて店頭しか撮るの忘れちゃったい。

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 台北、台南も一応出かけてみたけれど、ううむと唸るような美味との遭遇率は、今のところ台中がダントツである。ビールまで生の美味いの出す店があるんだもんなあ。小籠包以外にも、露店やオツな庶民的小店で美味しい思いをして回り、最後に出かけたのが、下調べしておいた高級粥の店である。

 台中のはずれというか、台中駅の隣りの太原駅が最寄りで、そこからでも車で10分見当という、とんでもない場所にある。旅行者が歩いていくのはまず無理。観光客なんてあたしゃ知らないね、のロケーションである。もの好きな美味好きとしては、楽しくないわけがない。

 夕方、台中の中心部にある宿泊先のホテルから、タクシー(お値段リーズナブル)に乗りこみ、行き先の住所を書いた紙を運転手のオジサンにひらりと見せる。オジサンうなづいて発進。街の中心部をするりと抜けると、街並みの明かりがぐんと暗くなる。心細くなること二十数分、寂しげな大通りの一角に到着した。オジサン前方を指さす。お目当ての「十分粥道」に到着である。

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 粥の名店なるイメージから……仙人みたいな料理人が、咳き込みながら営む薄汚れた小店とか、勝手に思い描いていたが、おばかジャパニーズの妄想をあっさり裏切る、清潔かつゴージャスな造りである。中も広々。

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入って左手は、カーテンで仕切られた大部屋が並んでいる。地元の方々の宴会などに愛用されているようだ。 

 席にこしかけ、妙齢のオネーさんからメニューを謝謝と受け取る。粥だけでなく、さまざまな料理が並んでいる。この店は、基本的に中国語しか通じない。メニューも中国語のみ。しかし、全て写真付きなので、そんなに困ることはない。もうひとつありがたいことに、その写真付きメニューをサイトで公開しているのだ。中国語でオススメを説明しようとするオネーさんに、事前にチェックして料理名を書き連ねておいたメモを手渡す。オネーさん、あやしいニッポンジン客の周到ぶりに苦笑を浮かべ、オーケイオーケイとうなずいて厨房に向かう。紹興酒をやりながら待つことほんのしばし。その日は空いていたこともあって、料理が次々とやってきた。 

 まず突き出しからやられた。トウガラシとエリンギを、じゃこであえた一品。さほど辛くはなくて、じゃこだけでいい塩味を出している。紹興酒と合うことといったらもう、ああ美味い。

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 そして「蘇州牛三寶」と「冰鎮冷蜆仔」が登場。前者はモツ、後者はシジミの醤油漬け。日本の台湾料理店でもお馴染みの前菜さんたち。台湾のシジミは色白ででかい。身も大きくぷりっとしていて、シジミの身をもりもり食っている感がうれしい。二品とも味付けは一見濃厚そうなのだけど、この店の味付けはあっさりめ。

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 続いて登場した「醬爆田雞」は台湾ではお馴染みの食材、カエル君を揚げて、野菜と合わせたもの。茹でて別置きしておいた野菜の上に、濃いめに味付けしたカエル君を乗せてある。合わせて食べると、これまたさっぱりした味わいとなる。カエル君、もちっとした鶏肉風でコクもあり、ウマウマケロケロです。

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 お次の「丁香炒山蘇」は、山蘇という台湾特産の葉モノ炒め。肉厚でかすかなぬめりがある葉モノで、クセがなくていける。酢を用いず小梅で酸味を味付けしているあたりがニクイよこのこの。

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 トリを飾っていただくお粥さまは、数ある中から「鮑魚干貝粥」をチョイス。文字通り鮑(アワビ)の粥である。薄切りにした奴がぼんぼん入っている。海老なども混ざっていて具だくさん。これを、自家製XO醤を各自加えて頂く。

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 注文を受けてからじっくり炊き始めるお粥は、素材のダシだけで煮込まれている。素材の持つ味がしっかり引き出された、濃厚かつ端正な味わいに、大いにうなる。自家製XO醤をちょいと加えてやると、途端に味が変化するあたりも楽しい。大中小のうち、1〜3人向けの小サイズを頼んでも、土鍋でどどーんと出てくる。いや、もう、お腹いっぱいです。 

 ともかくこの店の味付けは総じて、あっさりしている。化学調味料を用いず、なるだけ素材で味付けしているのだ。それゆえ濃い味に慣れていると物足りなく感じるかもだが、しっかり味わうにつれて、あっさりの奥に隠れた自然の素材のうま味がじわじわとわき出してくる。舌にもカラダにもいい料理。そのスタイルは伝統的な日本料理にも通底するものがある。

 ちなみに粥のメニューには、種類ごとに健康効果が書き添えてある。「鮑魚干貝粥」は「能明目滋陰養顏美容」つまり、目によく美容効果ありというわけだ。

 最後にサービスで供された、スモモの甘酢漬けまで、絶妙に酸味を抑えたさすがの一品。

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 はい、もう参りました。

 あれこれ食べて飲んで、5、6千円ぐらい。同じもの日本で食べたアカツキには3倍は行くでしょうねえ。食後も胃もたれはなく、快適なごちそうの一夜となった。ああ生きていてよかった。 

 かくして大満足の台湾お礼参りとなったが、万事万々歳といかないのが旅のいいところ。

 台湾新幹線は、日本からもインターネットであっさり前払いで取ることができる(英語力または英語の話せる相方がちょい必要)。予約した証をプリントアウトして駅窓口に持参すれば、切符が手に入るのだけど、予定より1日前で予約していたことに、窓口まできて気がついた。こちらの完全なる凡ミスである。

 しかし、台湾鉄道は偉大だった。窓口のメガネの好青年風の駅員さんは、落ち着いて上役と相談すると、無償で当日券に交換してくれるではないか。考えられないサービスでございますよ。おかげで、さらに台湾に借りができてしまった。お礼参りのつもりが返り討ちに遭ってしまったでござるの巻、である。

 借りを返しにまた食べに来なければなあ、むふふ。調子こいてそう誓うのであった。


(写真・文=奥谷道草)


DATA 十分粥道

鮑魚干貝粥・小(1-3人)サイズ500台湾ドル(1台湾ドル=約2.6円)  台中市北屯區松竹路三段28號 電話(台湾)04-2246-9169  営業時間 平日11:00~14:00 17:00~22:00 無休 http://www.veryporridge.url.tw