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【グルメの迷宮】津軽ご当地美味ソバ2景◆弘前[こぎん][中みそ]

12/03/13 |散歩の達人編集部より|

 前回、JR上野駅で乙な一杯をやったついでに、いたく旅情を刺激され、ひらりと東北行きの夜行列車に飛び乗った……なんて根性はないんだけども、ちょいとした用事で青森の弘前へと大遠足に出かける機会を得た。羽田から飛行機に乗って1時間ちょっと。それから空港バスに乗り換える。天候が良ければラクチンである。

 出かけたのは三月のひな祭りの頃だったのだけど、例年にないという大雪が待ち受けていた。山中をゆるゆると下っていく空港バスの周囲は白一色の大平原。道の両側は雪かきの跡も生々しく、幾重にも層になった子供ぐらいの背丈の雪のかたまりが延々と続いている。おおすごい。さながら白い巨大ミルフィーユである。茶色いドロほこりをかぶったカ所もあって、こっちはティラミスだね、などと早くも食い意地を膨らませているのであった。

 50分ほどで、JR弘前駅に到着。3月だっちゅうのに雪が降ったり止んだりですよ。  

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 とりあえず、駅の中にかけこむと、向かって右脇にモダンな観光案内所があり、そこでゴム長の無料貸し出しをやっている。さすが北国。しっかり雪で被われた歩道は、その位滑りやすいのである。

  その観光案内所のちょい先にあったのが「こぎん」という蕎麦屋である。

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 見ての通り、どこにでもありそな駅ソバの風情である。注文も入口脇の自販機でチケットを買うやつ。きつね、天ぷらなど、おなじみの品目が並んでいるが、よく見ていくと下の段に、おや? というのが混ざっている。「幻の津軽(かけ)そば」とある。自ら幻と名乗っちゃうあたりは、いかがなものかなのだけど、弘前を含む津軽地方には独自の蕎麦文化があることは聞いていた。しかも駅ソバにしては、お値段もかけそばで440円と強気である。おーし、お前さんから食ってやろうじゃないの。偉そうに500円玉を自販機に投函すると、哀れむような寂しい音をたてて食券と釣り銭がはき出されるのであった。

 店内は壁に沿ってテーブルがならぶ腰掛け式。

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 地元の人も普通に利用している。セフルサービス方式になっていて、入口右手の厨房にチケットを置き、適当な場所に腰掛ける。ほどなくして声がかかり、自らテーブルに運んできたのがこれ。

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 おおホンマに刻みネギしか乗ってない。そして見た目にもそばの麺が、なんかてろんとしている。このてろんが津軽そばの特徴で、ご当地と縁のない異邦人は、伸びた蕎麦なんぞ食えるかよ、けっ! と、憤慨することもままあるとか。まあしかし、うどんの世界なら、でろでろに伸びた博多うどんなんてのもあるし、必ずしも伸びた麺=アウトでもない。こればかりは食べてみないとわからない。割り箸に手を伸ばし、さっそく頂きます。

 むむむ。最初の一口目からいい感じに裏切られた。あー笑顔が広がっていく−。たしかにコシはあまりないものの、モッタリと膨張することなく、食感はさらりとしている。たぐると口のなかでほろりとくずれる感じが心地良い。弾力性の少ない米の麺を食べている感じである。さらに汁が美味い。

 澄んだあっさりした味で、魚のうま味が存分に引き出されている。品の良い軽やかな汁蕎麦である。小腹ふさぎにはもってこいの逸品。駅ソバでこのレベルっすかあ。すっかり気に入って滞在中あちこちで3軒も食べ回ってしまった。 

 その後会ったワケシリな地元の知人によると、津軽そばは擂りおろした大豆をつなぎに用い、茹でて1日置いた麺を使うのが特徴で、だし汁はイワシ(正式には一度焼いてから天日で干した、焼き干し)。あれこれ手間がかかるので、出す店が減っていて、それが幻と呼ばれる所以なのであった。「こぎん」の蕎麦は、一晩寝かせたに蕎麦掻きにそば粉を合わせ製麺し、さらに一晩熟成させたものだそうで、大豆は使われていないのだけど、初の津軽そばとしては、十分新鮮なうまうま体験であった。朝6時20分から駅ナカで食べれちゃう利便性考えたら、ぜんぜんアリ。

 うまいうまいと叫んでいたら、地元の知人がそれじゃラーメンもならではのがあるよ、と津軽なまりで教えてくれたのがもう一軒の店である。

  場所は、JR弘前駅から徒歩15分ぐらいの場所にある、地元デパートの中三(なかさん)弘前店。

 弘前の市街地はちょっとおもしろい拡がり方をしていて、JR弘前駅前は中心地ではない。東北新幹線の開通で利便性が向上したものの、それまでの長距離移動の主役はバスで、駅前西側の奥手にそびえる巨大なイトーヨーカ堂、それと一体化した弘前バスターミナルがその中心だった。昭和レトロな雰囲気漂う、いい感じのターミナルである。さらにその西側に進むとぶつかる広い筋が羽州街道で、桜の名所として全国的に知られる弘前城へと通じている。ここがメインストリートで、衣料・雑貨に食料、喫茶、飲食店などが揃い、賑わっている。

 中三弘前店は、羽州街道を弘前城に進んでいくと交差する土淵川を越えたすぐ先にある。目指す店はこのデパートの地下1階のフードコート。

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思いっきりフードコートである。教えてもらわにゃ、絶対来ないよ。

  ここに入っている「中みそ」こそ、地元弘前でソウルフードと称されるほどの支持を集めるラーメン屋なのである。売りはみそラーメン。12時前でもなかなかの賑わい。サイズが小・普通・大盛りとあるのは、幅広い年齢層に支持されている証だろう。しかし小サイズを頼んだけど、出てきたのは普通盛りである、どう見ても。

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 どどんと乗った迫力の野菜くんがうれしい。弘前は産地直送という感じで、野菜も魚もあたり前に美味いのでなおさらうれしい。一見濃厚そうなスープは、さにあらずしてほんのり甘いまろやか味。ブタバラ肉と共に隠し味的に挽肉が潜んでいる。強い主張はないが、スープが細ちぢれ麺といい具合にからみ合い、心も身体も温まる感じ。中毒性の強い一杯である。なるほどねえ。

 ああうまかった、ごちそうさん。 

 弘前は青森から山間に入りこんだ、エアーポケットのような土地で、こじんまりと独自の文化を持っている。飲食でも津軽そばを筆頭に、数店の喫茶店で、江戸時代の弘前藩士が薬として飲んだ「藩士の珈琲」を再現して供したり(味はビミョー)、やたらにフレンチ風洋食店が多かったり、嶽きみというトウモロコシがうまうまだったり、名産のリンゴとそれを使った菓子は食すべきだったり、散歩者には見所食い所満載なのであった。

 (写真・文=奥谷道草)

 

DATA 

 「そば処こぎん」

津軽そば440円 JR弘前駅中央口1階脇 電話 0172-32-1358 営業時間 6:20~20:00 無休

 「中みそ(旧名チャイナドール)」

みそラーメン小500円・並600円・大盛り680円 中三弘前店地下1階フードコート内 電話 0172-34-3131 営業時間 10:00~19:00 休日・デパートに準ずる。