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【グルメの迷宮】Z老師の三明治◆洪瑞珍[台中]

13/05/13 |散歩の達人編集部より|

 フーフ揃って台湾熱が下がらない。年末、中国語教室を近所に見つけてしまい、2人揃って台湾語(中国語の方言みたいなもの)を習う段階にまできてしまっている。いまだロクに会話もできないものの、ええい行くところまで行ってみるアル、の意気込みである。散歩の達人で台湾特集しないかな、散歩するにはうってつけなんすけどねえ……え、一昨日おいでですか、了解。

 現在、台湾語を教わっているのはZ老師。老師というのは先生の意味で、先生は年齢性別に関係なく老師(ラオシー)となる。なのでZ老師も、育ちのよさがほんわか漂う台北乙女であったりする。
 授業は週末の週一で、毎回ヒヤリングの書き取り試験などがあり、成績に応じてキャンディーを頂ける。目下、週末における人生最大の楽しみである。
 Z老師はもちろん日本語ペラペラなのだけど、昨年日本に来たばかりなので、日本というか東京に関して、さすがに知らないこともある。なので授業の合間に、吉祥寺や渋谷の穴場的オススメ店を散歩の達人の取材で培った情報を駆使して紹介したり、代わりに台湾ネイチィブのリアルな暮らしぶりを教えてもらったりと、楽しくゆるく台日交流を行っている。そうこうしているうちに連休の時期が近づいてきた。

 例年だと混雑をさけて、家にこもっているのだけど、今回は偶然台湾行きのキップが取れてしまい、家計簿をやりくりして台湾行きと相成った。1月にも訪台したばかりなんですけどね。Z老師に台南〜台中〜台北と駆け足でめぐりますと告げると、台中行くなら行かなきゃいけませんと、眼力こめて推奨されたのが三明治の老舗である。
 「三明治」とは何ぞや。字面だけ見ると何の事やらサッパリだけどサンドイッチのことで、サンミンチーと発音する。つまり三明治はサンドイッチの当て字なのですね。Z老師によると、その店の三明治は、台中に用のある友人がいたら、買ってきもらうくらいオススメのうまうまなのだそうな。

 台中でサンドイッチなの〜? 少々微妙に思いながら台湾旅行の日を迎え、台中に到着。台湾鉄道の台中駅(台湾新幹線の同名駅と間違えぬこと)から徒歩10 分ぐらい。大通りの一本裏筋にその店はあった。何だか異様に風格がある。知らなければパン屋とは思えない佇まいだ。

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 旅程の都合で、時間は夜にかかっていたが店内はそこそこお客で賑わっている。

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 日本のパン屋ならそろそろ店じまいの頃合いだが、ここは夜10時まで営業しているのだ。店内はいたってカジュアル。少し大きめの町のパン屋さんで、名物の三明治以外にも庶民的なさまざなパンが並んでいる。老舗だからと気負った雰囲気はないが、活気が漂っている。一方、観光テイストはなし。ジモティーなお客さんばかりの賑わい。あーこりゃホンモノだ。
 目指す三明治は、入口入って脇の棚にずらりと並んでいた。レトロな包装紙がなんともよろこばしい。

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 六種類あっていずれも包装紙に「招牌(ジャオパイ)」と誇らしげに記されている。看板商品のことで、ここに限らず台湾の信用のおけそうな飲食店で迷ったら、「招牌」とある品より選べば、大きな失敗はないはず。

 六種類は食べきれないのでどうしよう。棚の名札に「招牌原味三明治」と、ことさら招牌をアピールしているのにまず手を伸ばす。看板商品の基本味といったところなんでしょうね。それに麦芽パンらしい茶色い生地のと、イチゴジャムらしいやつを気分で選ぶ。

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 外に出て、こらえ性なく招牌の三明治の包みをさっそく開いてみた。あっけないほどシンプルである。マーガリンらしきものを塗った4層の食パンに、ぺらぺらっの卵焼き・ハム・卵焼きが挟んである。

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 東京のフツーの町のパン屋のほうがよっぽどボリュームあるぞとかつぶやきつつも大口でぱくり。

 う、うーむ。
 思わず黙りこんでしまった。何だこの未体験の美味は。まず食パンの生地がほんのりほのかに甘い。パン本来の持ち味を殺す程ではなく、ああこういうパンもありかもねという甘みである。薄切りのハムのちょっとした塩味と、卵焼きのコクがほどよいアクセントで、具とパンが一体となってひとかたまりの美味になっているのだ。サンドイッチって、具かパン生地のバランスがよくなくて、食べ進むといずれかをもてあまし気味にする事ってあるじゃないんですか。この三明治にはそれがない。ちょうど具合よくまるごとマルっと食べ切れるのだ。必要最低限にしぼりこんだ具材の醸し出す絶妙のバランス感。大げさな言い方だが、食べた時はその鼻膨らませてその位興奮させられたんだから仕方がない。心地よい甘みがほのかに残り続ける、食後感もステキ。中毒性と完成度の高いおそるべしサンドイッチである。
 翌朝食べた他の2種は、パン生地がやや堅くなってしまったものの、イチゴ味のはイチゴジャム・チーズ・イチゴジャム、麦芽タイプは卵焼き・チーズ・卵焼きの布陣で、やはりバランスのセンスで食べさせる美味サンドであった。台中行ったら必ず食べるぞリストに追加決定である

 ちなみにこの店、同じ名前の店が台北などにチェーン展開している。ところが経営が違うんだとか。店のサイトにも「僅此一家、別無分店(店はここだけ、分店はなし)」と、はっきりしっかりうたっている。台北っ子のZ老師が、わざわざ台中から買ってきてもらうのもナルホドなのである。

 それにしてもこの食べ歩き、近頃台湾ネタがちょい多すぎる。日本で知られてなくて、遠足の参考になりそうな店があれば、また紹介することもあるけれど、もちょっと自戒しないとね。ご容赦、謝謝。

(写真・文=奥谷道草)


DATA 

洪瑞珍(台中)
三明治各種23〜30元(70〜100円ぐらい)。台中市中區中山路125-2號 (中山路、市府路交叉口)  営業時間9:00~22:00(日13:30~) http://www.22268127.com/