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【グルメの迷宮】破格の美味!スイーツ・フルコースでふっふっふっ◆神楽坂[セシル・エリュアール]

13/11/08 |散歩の達人編集部より|

 先月の神楽坂特集でスイーツ紹介を担当させていただいた。
 元来神楽坂は、洋菓子過疎地帯であった。それがこの5・6年で粒ぞろいのスイーツが集結し始めている。歩いて回れる手頃足頃なエリアに、この1年だけで7軒増加は半端ないっすよ。それも、こだわりを持ち、主張を秘めた店が目立つのが特徴。広く一般受けする品を第一に考えざるえないデパ地下あたりじゃ味わえない、個性派ケーキも少なくないのである。神楽坂特集では、新規の店から5店舗紹介させて頂きましたけど、個人的に特に印象に残ったのが「セシル・エリュアール」である。ドイツ及びスイスと隣り合うフランス・アルザス地方の伝統的な焼き菓子をメインに扱う店で、ショーケースに並ぶのは焼き菓子ばかりであるからにして、見た目は地味。デパート辺りにあったら素通り確実であろう。だがしかし、素材を惜しまず基本に忠実にしっかり造られたその焼き菓子は、食感といい風味豊かな味わいといい、食せばううむとうなる逸品なのである。

 ちょいわかりにくい場所に7月オープンしたばかりでありながら、すでに週末は品薄状態なのもうなずける話。さらにこの店では、要予約でその場で仕立てるスイーツのフルコースを頂くこともできるのだ。お値段は5000円と6000円の2種。うーむ5000円かあ、スイーツとなるとちょっと躊躇するお値段だなあ。それに甘い物三昧じゃ、さすがに飽きそうだし……。
「そんなことはありませんよ、ふっふっふっ」
 と答えて穏やかに微笑む、オーナー件パテシエの鈴木さんのスイーツ・オーラと、焼き菓子の美味さに甘く背を押され、後日、食いしん坊仲間と連れ立ちそのフルコースに出かけたのである。

 メトロ神楽坂駅の1番出口を出て左手を向くと、すぐ左に曲がる筋がある。その先はモダンな赤城神社。
 せっかくだからお参りしていって、済んだら本殿向かって左手奥にある細い北参道へ進む。参道の石段を下りその先のT字路へ出ると、進行方向正面に延びるゆるい下り坂がある。その左脇に、絵本に出てきそうな赤い屋根の白塗りの一軒家が見えるはず。それがセシル・エリュアールである。

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 ここにあった古民家に惚れ込み改装して開店。少々判りにくいのを承知で選んだというロケーションが、散歩好きならまずそそられるでしょうね。

 時間は夕刻。元民家ゆかりの引き戸をあけると目の前にショーケースがどん。店先は狭く数人入れば一杯である。フルコースは、ショーケースの向こう側に入り、隣の6畳ほどの部屋で食すことになる。席は6人掛けだが、今のところ4人でめいっぱい状態。厨房の脇で出来たてを食べるぞっというラフな雰囲気である。

 

 しかし、フォークナイフ類は銀製だし、食器類も一級品の本格派。油断めさるな。BGMの類はナシ。照明を組み合わせ、昼間の自然光のように仕立てた明かりが美味を引き立てる。

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 鈴木さんの簡単が挨拶があり、さあてコース・スタート。内容はおまかせで、旬のフルーツを主役に据えた入魂のスイーツ数種が供される。旬を重んじるゆえにメニューは月毎に異なり、月内でも気候やお客の様子に合わせてアレンジがほどこされる。つまりは一期一会のフルコースなのだ。今回は、りんごの紅玉が旬なので、紅玉メインのコースになるそうな。
 よろしくお願いしまーすと、我ら食いしん坊ども。こういう時だけ声をそろえるのもなあ。
 さっそく供されたひとサラ目は、カップの底にちんまり治まるプリンである。

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 前菜的な品だからで、ケチってるワケじゃないよ。牛乳と卵と砂糖だけを用いたシンプルこのうえない品なれど、ゆえにごまかしが効かない。自然な素材の深い味わいに、まずほうとつぶやく。

 2品めが、すり下ろした林檎のスープに、100g1万クラスの紅茶で仕立てたミルクティーで造ったアイスクリームを添えたお品。

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見よ、この物静かな迫力をとか思いながらさっそく、ぱくり。
 はふう……。
 あえて裏ごしせず残した、ざらりとした舌触りも心地よい林檎スープのまろやかな酸味と甘みが穏やかに口に広がる。次いでミルクティーのアイスクリームと合わせると、紅茶の複雑な風味でもって味わいが万華鏡のように変化。そして、アクセントにひと振りしたカルバドスの深い風味が、余韻をまとめあげる。すべてが自然に組み合わさり、あざとらしさがない。こんなレベルのスイーツ、ありえるんだ……絶句である。

 興奮さめやらぬうちに3品めが登場。思いきり直球の焼きリンゴである。上にアイスを乗せた姿はさながら高貴な雪ダルマ。

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 さっそく切り分けて口に運び……果実本来の食感と風味を残した絶妙の焼き加減にうなるうなる。奥深い実の甘みと鮮やかな赤い表皮の酸味の取り合わせ。紅玉じゃないと出せない味なのだそうだ。普通のフルコースのメインディッシュを彷彿させるボリュームと味……ふたたび絶句である。

 4品目は、栗のタルト。サブレ生地にアーモンドクリームと蒸し栗を合わせ渋皮栗とフランボワを入れて焼き上げた品。パイ生地にも和栗が加えられ、上に木イチゴを散らしてある。和栗ならではの落ち着いた甘みと風味が、心落ち着く味わい。こちらはお店のブログに美しい写真で紹介されてたので、容姿はそちらを参照してね。

 スイーツは以上。
 続いて〆に出されるのが紅茶なのだが、これまた当然のようにタダ物ではない。今回は春摘みのオーガニック・ダージリンが選ばれた。。先に出たミルクティーのアイスと同クラスの逸品で、見事に抽出された、奥行きある複雑な渋みと香りが見事。スイーツの余韻と相まって陶酔感をかもし出す。

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 鈴木さんいわく、「コーヒーは味をリセットさせ、紅茶は余韻を楽しませる」そうで、それゆえスイーツの味わいを大切にするなら、紅茶を食後の仕上げに頂くべきなのだとか。こういう理想的な形で出されれば当然の納得である。
 そういうこともあってこのフルコース、食事中の飲み物はミネラルウォーターのみで、冷たいと舌をマヒさせるというので常温。あくまで口をゆすぎ味覚を整えるための飲み物となっている。スイーツの完成度が高いので、余分な味は邪魔になるだけだからなのだけど、そこまで筋を通しているフルコースなのである。

 立て続けにスイーツを食べたのにもかかわらず、もたれたり、甘みが変に口に残るようなこともない。スイーツづくしでありながら、飽きることなく平らげられてしまったのには、自分的にはちとビックリだ。
 これまた鈴木さんによると、バランスが整っていると、甘みや特定の味が悪目立ちしないものなんだとか。へへーおっしゃる通りですとアタマを下げるしかない。店頭の焼き菓子同様、見た目は地味だが、甘い物好きであれば少なからず衝撃を受けるはず。「素晴らしい」という形容を飛び越えた「凄まじい」スイーツと呼びたい。

 舌鼓をうちつつ鈴木さんの示唆に富む話に耳を傾けた末、いい具合に満ちた腹をかかえて店を出る。
 この満足感、どうすれば伝わるんだろう。強いて言えば、たまに本格的なバーで上物のカクテルやらスコッチウィスキーに舌鼓を打つ時の感触に似ている。そういった場所で数杯煽げば5000円位ひょいと行ってしまうわけで、そう考えれば高い感じはしない。現に、また食べたいとすでに舌がうずいているものなあ。あーやばいぞこれは。
 かくして食べて納得のフルコースであったのだけど、問題がひとつできてしまった。
 このレベルの味を知ってしまうと、イヤな奴になりかねないのだ。これから他の店でスイーツ食べると、
「いやあ悪くはないんだけどね、ふっふっふっ」
 とかついやってしまいそうで、大いに警戒したいところなのである、ふっふっふっ。

(写真・文=奥谷道草)


DATA 

セシル・エリュアール
フルコース5000円か6000円要予約。焼き菓子は100円台からあり。新宿区赤城下町3-9 電話03-6280-8226 営業時間12時~19時頃、日月休。http://kyukyoku-no-sweets.net/