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【グルメの迷宮】豪華で素敵な素食ワールド◆蓮香齋[台北]

13/12/06 |散歩の達人編集部より|

 今年3度目の台湾散歩である。冬場の台北は小雨がちで肌寒く、日本の晩秋ぐらいの気温。台湾=汗ダラダラの常夏なんて思いこみを、ちゃぶ台返しされる。台風が来襲してるわけじゃなし、風情として心地よいんですけどね。
 今回もあまり日本人観光客と出会わないような場所を取材モードで散策し、心身ともお腹一杯にして帰国。中でも最大の収穫は素食体験であった。
 「素食」とは何か。質素な料理のことじゃないアルよ。台湾におけるベジタリアン料理の総称である。「スーシー」と読み、道教や仏教など宗教的理由からこのような料理が食されている。歴史は古く、肉類はもちろん、ネギ、ニラ、ニンニク、ラッキョウ、タマネギ、牛乳に卵もダメという条件の元で料理される。
 実は、台湾ではかなり浸透しているポピュラーな料理だったりする。台湾は10人に1人がベジタリアン。ベジタリアン率ナンバー1のインドに次ぐ数だというからびっくりだ。それゆえ、どんな田舎に行っても素食の店はあるらしい。なんちゃってな店もそれなりにあるらしいですけど。ともかく、我が国では、コッテリした屋台メシとか小籠包とかに目がいっちゃいすぎていて、イマイチ不人気な台湾料理のジャンルなんである。

 今回行ったのは蓮香齋(リェンシャンツァイ)という、デラックスな有名店。台北の松山空港にほど近い場所にあったが、今年ずるっと南下して、南京東路五段と三民路という大きい筋の交差点近くに移転した。不慣れな我ら観光客はタクシーで行くしかないロケーションだが、MRT(地下鉄みたいな電車)の新駅「南京三民路駅」が来年末あたり、近くに開通予定なので、ぐっと行きやすくなるはず。
 大きなビルの正面玄関を入った奥にあるので、知らないと少々手こずる。出かけたのはランチタイム。高級感あふふる入口を入ると、開店前にかかわらず大勢のお客さんで静かに賑わっている。

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 何せ人気店なので600席の席数を有しながら週末は予約でいっぱい。その日は月曜だったが、スペシャルプライスデーでお安くなるので念のため予約をしての入店である。しといてよかったー。店は日本語対応はしてないので、宿泊先のホテルなどにお願いするといい。予約すると番号を告げられる。お店でその番号を見せればそのまま入店できる仕組み。しかも自助餐(バイキング)形式なので、現地語がしゃべれなくても入っちまえばあとはなんとかなる。台湾的には値の張る店なれど、日本円だと二千数百円見当のお値段なんですけどね。

 開店時間となると、客は瀟洒な螺旋階段を降りて地下1階へ導かれる。

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 空間がどーんと広がっていて、思わずおおデカイとのけぞる。指示されたテーブル席に荷物を置き、さあて開始である。店内はざっくりいくつかの部屋に仕切られてあり、600席あってもゆったりしている。その部屋の間をつなぐようにして料理コーナが並んでいる。スタイリッシュで東京のデパ地下さながらの造り込み。

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 料理がまたすごい。中華風、洋食風、和食風、麺類、飯類、汁物各種、飲み物多数、スイーツまで何でもござれの充実ぶりで、見て回るだけでも大変なほど。それが全部ベジタリアン料理なんですぜ。お麩やコンニャクなどの素材を巧みに操り、肉っぽくみせていたりと見た目も実に楽しい。あれこれ200種類以上あるんだとか。食べるのに夢中で数えなかったけど。

 味つけも濃すぎず薄すぎず、しかも多彩である。これは何回も取りに行った皿の幾つか。

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 いかにもコンニャクっぽい品もあるけれど、赤身の刺身の味はがんばってたなあ(笑)。ケーキのクリームなどホンマに乳製品を使っていないのか首をかしげるほどの出来ばえである。

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 また、野菜そのものを味わえるサラダ系のコーナーもあって、コトにはまったのが湯がいてくれるコーナー。手前で好きな野菜を皿に取り、カウンターの向こうの店員に渡すと、さっと湯がいてあっさりしたタレをかけてくれる。

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 別のタレも数種用意されていて好みの味に整えられるのだけど、野菜の質のよさも手伝って、かすかな苦みと豊かなコクのある野菜の旨味を味わえる、忘れがたいヒト皿となった。

 一度の訪問ではとても全種類の料理を食べきれない。しかも肉ナシというのにまるで不満がしない。それまで漫然と抱いていたベジタリアン料理観がふっとび、全食制覇の企みもふっとび、謙虚な心持ちに立ち返り、食べられる範囲の料理を口に運びつつ、あたりを見回す。
 尼さんが目をきらきらさせながらスイーツをテンコ盛りしていたり、老人から子供まで、誰もが気兼ねなく、同じ料理を口にして舌包みを打っている。

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 この穏やかで暖かな雰囲気は何だろう。

 我が国のベジタリアン料理は、どちらかというと禁欲的で、メニューのバリエーションも多くない。味付けがイマイチでもカラダにいいんだからと無理に納得して食べているようなところ、ないだろうか。しかし、この店には、そのような窮屈さはまるでない。誰もが無理なく楽しめる、快楽的なベジタリアン料理なのである。
 目の前に広がる和気あいあいとした風景は、決して一朝一夕に出来上がったのではない。長い年月をかけて、食べ手と料理人が作り上げたもの。台湾の食文化が育て上げたひとつの極みが、この店にあると言っていい位だ。その事に思い至ったとき、感動すら覚えるのであった。
 当分続きそうな台湾詣でに新たな楽しみが加わった。訪れたら一度はどこかで素食を試すこと。食べ過ぎてもほとんどもたれないし、現地ならではの雰囲気と味をどなたにも挑戦してみて頂きたいなあ、と思うのであった。

(写真・文=奥谷道草)
  

DATA 
蓮香齋
 ランチ600元、ディナー700元(休日週日700元、月曜570元) 台北市松山區南京東路五段188號 11時30分~14時、17時30分~21時、無休、電話02-2761-2277