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ジパング倶楽部

毎月25日発行

今月の一句    毎月下旬更新

「ジパング倶楽部」会員様から投句いただいた作品を、選者の評とともに掲載します(敬称略)。

※写真はイメージです。

 

 

 

【選者】    黒田杏子(くろだももこ

  東京女子大学入学と同時に山口青邨(せいそん)に入門。卒業後、定年まで博報堂で働く。『広告』編集長などを務め、瀬戸内寂聴をはじめ多くの文化人と親交を結ぶ。30歳から「日本列島桜花巡礼」を単独ですすめ、58歳で満行。「桜と巡礼」の俳人としても知られている。

kuroda momoko

■今月の一句 応募要項

「今月の一句」は、お題に沿った俳句作品をお一人様3句まで(お題ひとつにつき1回限り)ご応募ください。 採用者には、QUO(クオ)カードを進呈します。

3月のお題/雛(平成30年1月10日締切。ハガキの場合は当日消印有効)
4月のお題/春風(2月10日締切。ハガキの場合は当日消印有効)


応募はこちら

■入選作品発表

haiku12_2.jpg 12月のお題:    コタツ


【総評】
コタツ(炬燵)が日本の家庭のなかで、まだまだ活躍中であることを知りました。もっとも、若い方たち、若いカップルの住まいの中ではどうなのでしょうか。コタツの句を詠もうとなさる時、ぜひ『歳時記』を開いて例句などをご覧になると、句境がグンと広がります。『歳時記』は日本の文化、暮らしの結晶です。経験、体験、記憶が深まり、あなたの人生が豊かに照らし出されるはずです。

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古くさいコタツを出して妻偲(しの)ぶ    埼玉県 前田圭秀(78歳)

  亡くなられた奥様との日々をなつかしみ、愛おしみ、勇気を授けられる。「古くさいコタツを出して」。ここの表現が、何ともいえない味わいを一句に醸(かも)し出しているのですね。奥様は天上でニッコリされていますね。

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練炭のにおいぬくもり祖父の席    宮城県 氏家勝子(70歳)

  おじい様のお席。なつかしいですね。「練炭のにおい」で、ますます臨場感が加わりました。おじい様に愛され、ご自身もおじい様が大好きだった方の句だということがよく分かります。「コタツ」という文字を出さないで、コタツの間であることが分かる。これもなかなかの腕。

骨董のごとく父母座す炬燵かな   岡山県 髙栁美意子(83歳)

  ともかく、ご両親の在りし日のお姿をじつによく描いておられます。ご長寿を保たれたのでしょうね。「骨董(こっとう)のごとく」お二人仲良くコタツに。こんな句を詠めてよろしかったですね。ご両親のこと、もっと詠んでみてください。

掘りごたつ母の足元台座置き    神奈川県 長岡佳子(69歳)

  小柄なお母様なのですね。「堀りごたつ」は深いのですね。台座を据えて、そこを母上様専用の席とされていた。現在のことかもしれませんが。お母様を囲んで、むつまじく暮らされるご一家の風景。すてきな句です。

空高くこたつ布団にアキアカネ       岩手県 豊巻勝範(67歳)

  こちらは、「こたつ布団」を詠まれました。お日様に当ててふっくらとさせる布団。青空に干した「こたつ布団」。そこにアキアカネがやってきて、しばし留(とど)まる。のどかでこころ和(なご)む光景。「コタツ」という題で詠まれた新鮮な作品。

雨つづき手持無沙汰に炬燵出し    大阪府 竹久カズエ(76歳)

  ちょっとした小説。短編小説の一節のような句柄にこころ惹かれました。「手持無沙汰に炬燵出し」だけではつまらない。上五に置かれた「雨つづき」、ここがおもしろいのですね。外出もままならない日々。炬燵を出してみた、は共感できました。

 

 

haiku11.jpg 11月のお題:    紅葉


【総評】
紅葉と聞いて、こころがいきいきとしてきますね。カナダなどではメープルツリーが中心で“黄葉”ということになるそうですが、私たち日本人は文字どおり、“紅葉”。燃えるような紅色の世界に親しんでいます。今回もいろいろな角度から詠まれた力作が揃いました。どうぞお愉しみください。そして紅葉という「季語の現場」に足を踏み入れてみましょう。

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初紅葉跳んで触れゆく登校児    愛知県 中島昭親(87歳)

  「初紅葉(はつもみじ)」がいいですね。「あっ、紅葉してる」とその生徒さんはジャンプして紅葉に手を触れたのです。写実の目が効いた句には存在感と臨場感があり、読んで気持ちがいいですね。映像も浮かんでくるこの句を推します。

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尾瀬沼を風に吹かれて草もみじ    東京都 古伏脇翠(83歳)

  木々の紅葉だけでなく、地面を覆う草も紅葉します。尾瀬(おぜ)に行かれたのですね。一面に草紅葉が広がる光景が見えてきます。作者は今、秋冷(しゅうれい)の気に包まれて広大な尾瀬ヶ原を行く。何ともいえずおいしい空気。

兄二人逝きて五人で紅葉狩り    大阪府 兵頭克己(82歳)

  五人が健在。七人きょうだいでいらした作者。二人のお兄様がこの世を発たれても、五人の結束は固い。賑やかに紅葉狩りを愉しめるのですからお幸せですね。これだけの家族史をたった一行十七音字で表現できる。俳句は素晴らしいですね。

廃校の朝礼台や冬紅葉    愛知県 牧野敏子(84歳)

  児童数が減って、廃校となる学校が各地に増えています。廃校となった校庭に朝礼台が残っている。そして校庭の木々は冬紅葉となって燃えている。「廃校」「朝礼台」「冬紅葉」。この3つの言葉でその空間と世界を鮮やかに切り取っています。

紅葉の湯そこが故郷帰ろかな       埼玉県 樋口乾三(82歳)

  いいですね。故郷があって、そこには紅葉に包まれる温泉があるなんて。「帰ろかな」という人口に膾炙(かいしゃ)したフレーズを一行のなかにうまく取り込まれたところもよかったですね。ともかく、「紅葉の湯」がよかったです。

来年も生きて紅葉の奥秩父    埼玉県 三上早苗(80歳)

  日本中、この列島の各地に紅葉の美しいところがある。これは素晴らしいことです。幸せなことです。奥秩父(おくちちぶ)も紅葉がいいですね。「来年も生きて」。この書き出しが素晴らしい。四季のある日本に生まれて人生を愉しめることに感謝したいと思います。

 

 

haiku10.jpg 10月のお題:    秋風


【総評】
「秋風」という題。詠みやすそうで、そうでもない。なかなか難しい題だったことが、ご投句を拝見して分かりました。しかし、大勢の方が挑戦されて、この「秋風」の題で詠まれた句にはバラエティがありました。ともかくお詠みになることです。多作多捨はそれなりの効果をかならず作者にもたらしてくれます。ひとつの題で十句作ってみる。そこから道が開けてきます。挑戦してみてください。

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宅配の荷物に詰める秋の風    宮城県 中松伴子(66歳)

  宅配便がこれほど普及するとは。たいていのところには翌日到着。こんな世の中がくるなどと、想像していませんでしたが……。この句、「秋の風」がいいですね。春風でも夏の風でも、まして冬の風ではいただけませんね。一句を口ずさんでみますと、こころが広がってきますね。

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秋の風子は背に親子遍路かな    大阪府 三枝桂子(78歳)

  こころ惹かれる句なのでいただきました。お遍路(へんろ)の体験が生きています。幼子を背負って……。父親でも母親でもいいです。秋遍路ですね。いきいきとした親と子の姿がありありと浮かんできます。

秋風や門前町の喫茶店    栃木県 川勾幸子(79歳)

 喫茶店がどこにあるのか。門前町ということで、そのお店が今風のチェーン店ではないということが感じられます。歴史のある町に古くからあるお店。アンティークな印象の珈琲(コーヒー)のおいしい店。そんな感じがします。

秋風や殺生石に石の声    静岡県 山田幸次郎(87歳)

 栃木県那須郡那須町の殺生石(せっしょうせき)。『おくのほそ道』の旅で松尾芭蕉(ばしょう)も立ち寄っています。「殺生石に石の声」という重厚な表現に「秋風や」の上五を付けられたところ、巧いですし、過不足ありません。現場を踏まれた句の存在感があります。

ユトリロの街に佇み秋の風    大阪府 内本惠美子(67歳)

  「ユトリロの街」、パリを訪ねられた。すばらしいですね。私はユトリロの雪景色の絵も大好きです。これはあの白っぽい画面の作品でしょう。秋風と白という色は合うのですね。実際にそこに佇(たたず)まれた方ならではの作品です。

秋風の祈りの道は谷に沿ひ  和歌山県 市ノ瀬伊久男(70歳)

 

  和歌山県の方。高野山(こうやさん)への道でもいいですし、西国三十三所第一番青岸渡寺(せいがんとじ)への道でもいい。ともかく「谷に沿ひ」で、その谷川の響きも聴こえてきます。「秋風や」ではなく、「秋風の」とされたところも、この句の場合はよかったと思われます。

 

 

haiku09.jpg 9月のお題:    名月


【総評】
雪、月、花。いずれも大きな季語で、詠むことが難しいと感じる方も多いようです。しかし、今回どなたも月のなかの月をそれぞれ自在に伸びのびと詠まれていて、よろしかったです。ともかく、どんどん詠まれることです。それが句作上達への近道であることは間違いありません。句作によってご自分のうちに眠っている記憶を掘り起こすことはすなわち、人生の活性化につながります。

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名月や沓脱石に座して観る    静岡県 秋山一男(81歳)

  いいですね。ご自宅の沓脱石(くつぬぎいし)でも、月の名所のそれでもいいです。家の中から眺めるのではなく、名月の晩の夜風をもたのしみつつ、どっかりと腰を下ろして天を観る。おおらかで、健やかな身と心の持ち主の句です。

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名月や二次会へ行く仲間達    和歌山県 羽賀 明(66歳)

  そのメンバーに作者も加わっておられるのか、どうか。どちらでもいいですね。こんな月の晩、別れがたいと二次会へ繰り出す。若々しい精神が感じられる句ですね。「仲間達」と止めたところにも親しさが溢れていて好ましいです。

名月やちちははともに眠る山    愛知県 太田裕敏(80歳)

  ご両親が揃って安らかに祀(まつ)られている山。今その墓所の上に照る月。望月の豊かさが、ご両親の豊かな生涯を暗示しているようです。作者ご自身も父上と母上に愛されたのですね。そのお二人を見送られた安堵感が出ています。

名月に今日も平穏目を閉じる    愛知県 村川和子(77歳)

  「今日も平穏目を閉じる」ということは、名月の晩にかぎらない。しかし、まばゆく輝くみごとな月を、たっぷりと仰いだ日のこの想いは格別ですね。作者の想いが過不足なく読み手のこころに伝わってきて、共感を呼ぶ一行となりました。

湯に浮かぶ木の葉わたくしお月さま    新潟県 長谷川ふさを(81歳)

  こんな体験をされた方は多いと思います。露天風呂でしょうね。木の葉と作者とそしてお月さまと。三日月や半月でなく、この月は満月でしょうね。作者の幸せな時間が静かに読み手にも伝わってくる、豊かな作品です。

幼子と仰ぐ名月いつまでぞ    千葉県 若松昭子(69歳)

  この子と年に一度の名月を、あと何年たのしめるだろうか。現在の幸福度が深ければ深いほど、考えてしまう。同じ想いを胸に抱く方は多いと思います。いとしい幼子をかたわらに、ともに仰ぐ月の美しさがこころに沁みます。