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ジパング倶楽部

毎月25日発行

今月の一句    毎月下旬更新

「ジパング倶楽部」会員様から投句いただいた作品を、選者の評とともに掲載します(敬称略)。

※写真はイメージです。

 

 

 

【選者】    黒田杏子(くろだももこ

  東京女子大学入学と同時に山口青邨(せいそん)に入門。卒業後、定年まで博報堂で働く。『広告』編集長などを務め、瀬戸内寂聴をはじめ多くの文化人と親交を結ぶ。30歳から「日本列島桜花巡礼」を単独ですすめ、58歳で満行。「桜と巡礼」の俳人としても知られている。

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■今月の一句 応募要項

「今月の一句」は、お題に沿った俳句作品をお一人様3句まで(お題ひとつにつき1回限り)ご応募ください。 採用者には、QUO(クオ)カードを進呈します。

9月のお題/秋の夜(7月10日締切。ハガキの場合は当日消印有効)
10月のお題/菊(8月10日締切。ハガキの場合は当日消印有効)

※8月のお題からは、特選に選ばれた作品、氏名、住所(都道府県名)を本誌に掲載します。


応募はこちら

■入選作品発表

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6月のお題:    田植え


【総評】
選者として、今回ほど愉しく懐旧の思いを刺激された月はありませんでした。1938(昭和13)年、東京の本郷で生まれた私は、1944年の10月に父の郷里、栃木県に疎開。父の生家・旧那須郡下江川村上川井(なすぐん・しもえがわむら・かみかわい/現在の那須烏山<なすからすやま>市)に一家で暮らし、1945年4月に小学生となり、8月に終戦。大きな農家であった父の家で6年間、田植えをはじめとする農作業に積極的に参加したのです。今日俳人のはしくれとして生き延びております私の原点が、この村にあるのです。 

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遠き子へ今日の田植えの便り書く    大阪府 入山英介(67歳)

  いかにも若々しい農業者の暮らしぶり。都市労働者として生活しておられるお子さまに、「今年も無事田植えが済んだよ」と手紙をしたためられた。電話でもメールでもない。その文面、筆跡が目に浮かびます。「遠き子へ」「今日の」。ここがじつにみごとです。秀吟。

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畔座敷料理振る舞う田植かな    静岡県 我妻伊佐子(75歳)

 「畔(あぜ)座敷」とは素晴らしい。「畔」は「畦」とも書きます。田と田の間に土を盛り上げて境としたもの。「くろ」とも読みます。田植えをする人々を励まし、祝うために、ご馳走(ちそう)を整え、畔座敷をしつらえて、昼食をとってもらうのです。働いて空腹でいただくメニューはすべておいしい。弾けるような元気いっぱいの会話が聞こえてくるようです。

水神に詣でてよりの田植かな    静岡県 矢野悦子(70歳)

 田んぼは水が命。水神様は大切な守り神様。さらりと詠まれていますが、日本の稲作の根幹をしっかりととらえ、表現された作品に敬意を表したいと思います。昔のことではなく、現在のことを詠まれた句と受け止めました。手植えから田植え機に変わっても、変わらない日本人のこころ。尊いことです。

一村が水を絆の田植かな    三重県 伊藤 元(87歳)

 田んぼはすなわち水田。水が命です。村じゅうの田植えは水があってのもの。よい水を田に回らすことが大切。水源を守り、その佳き水を分かち合う。このことが明快に詠み上げられた句で、存在感十分の一行。87歳の作者が未来に向かって語りかけ、語り継いでくださっている。そのように感じて、いただきました。

田植見る祖父母座りて土手に居り    山口県 林 一(80歳)

  お若い時は早乙女(さおとめ)として、熟年になられてからは一家の大黒柱として、田植えを仕切られた女性なのではないでしょうか。ともかく年輪を重ねて、祖父母様はもう作業はされないけれど、土手に座って一家の田植え作業を見守ってくださる。生涯現役とはこの方々にこそ捧げたい日本語ですね。

休校の楽しみありし田植えどき  大阪府 衞藤聰一(78歳)

  ありました。ありました。下江川村では昭和20年代、「農繁休校」と称して、学校は休み。こどもたちも苗運びや昼食を田んぼに届ける。実際に田植えを手伝うなど、みなそれぞれに役目が与えられて、張り切って働いたのでした。勉強が嫌いな子にも神様はちゃんと目配りをしてくださっていたのでした。

 

 

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【総評】
「新緑」。この言葉はどなたでもご存じ。季語かどうかを知らなくとも、この言葉を使って一句をまとめることはたやすいことのように思われます。しかし、そういう誰でも知っている言葉を一行のキーワードとして使うことは、意外に難しい。「さて、どんな作品が寄せられるか」とたのしみにしておりまして、いい句、味わいのある句が揃いました。

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新緑に雨のうれしき日なりけり    愛知県 水野高爾(79歳)

 「緑雨(りょくう)」という言葉があります。よく晴れた日の「新緑」はもちろん気持ちのいい存在、眺めですが、この句の作者・水野さんのように、「新緑に雨のうれしき」という感じも多くの方の共感を呼ぶものであると思います。このみずみずしさは格別。「万緑(ばんりょく)に雨」ではなくて「新緑に雨」。ここを詠み上げられた感性に共感します。

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新緑や自作リュックに風詰めて    兵庫県 能勢水絵(73歳)

「新緑」の戸外に踏み出す。旅行でも散歩でもそれは自由です。なんといってもその背負ったリュックが「自作」であること。荷物とともに「風」も一緒に詰め込まれた。そこがじつにたのしい。新緑の風の心地良さを、このような表現、構成で表現できること。素晴らしいですね。

新緑のビル街に立つ弁当屋    東京都 夏目忠尚(81歳)

  東京で近頃よく見かけます。「ビル街」すなわちオフィス街です。車に積んだお弁当の種類もなかなかに豊富。選ぶたのしみもたっぷり。お弁当を買うための列ができる場合も。少しの時間、新緑の風に吹かれて立っていることもまた心地良い。現代の風景を鮮やかに切り取られました。

回転ドア新緑の風捲き込めり    東京都 大内セツ子

「新緑の風捲(ま)き込めり」。ここがいい。臨場感があります。「回転ドア」のあるところ、ホテルなども思い浮かびます。屋外と屋内を区切る結界に回転ドアがある。そのドアが人間とともに「新緑の風」を巻き込んだ。よくあることですが、あらためて句に詠み上げられてたのしいです。

新緑や牧水像に酒二本    神奈川県 保田昌男(83歳)

  若山牧水(ぼくすい)のお墓は静岡県沼津市の乗運寺(じょううんじ)にあります。牧水といえば日本酒。いわば“酒聖”ともいうべき国民的歌人。この句、どこの牧水像かは分かりませんが、ともかく、お酒、それも大きな瓶が「二本」。目に浮かびますね。「新緑」という季語もこの場合よろしかったと思います。

新緑や父に送られ仕事場へ    千葉県 宮沢道夫(66歳)

  作者が66歳ですから、お父上は80代でしょうか。「父に送られ」……。ここに私は着目しました。父と息子の絆(きずな)、こころの交流がさりげなく表現されていてこころに残る句となっています。もしかすると、作者は父上の仕事を継承された。そんな方なのではとも思いました。

 

 

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【総評】
「春風」と聞けば、こころが弾みます。どのような句が寄せられるか、たのしみにしていました。バラエティに富んだ句が揃っていて、選句をたのしみました。それぞれの作者の暮らしがいきいきと一行の世界に浮かび上がってきて、おもしろいと思いました。ひとつの季語で、これだけの句が揃うのです。俳句っておもしろいと改めて思いました。

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春風を詰める黄色の旅鞄    新潟県 加藤正子(65歳)

  「旅鞄(かばん)」の中に「春風を詰める」。この発想が素晴らしいです。しかもその鞄の色が「黄色」というところ、じつにいいです。黄色い旅鞄なんてあるのかしらと思いますが、あるのですね。これから探して買い求めようとされていると受け取ってもいい。ともかくこの句を特選に推します。

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春風にさそわれ旅す老一人    千葉県 市角 明

  作者のこころもち、姿が浮かんできます。歳を重ねたご自分を「老一人(おいひとり)」と記されていますが、気分は若者ですね。矍鑠(かくしゃく)とした男性がどちらを目指して旅立たれるのか、旅を愉しんでおられるのか。読後感が心地良い一行です。

春風や写経の一字はみ出しぬ   愛知県 成瀬悦子(77歳)

  写経をされる人の句であることにまず共感しました。そしてこころを込めて春風に包まれて写経を進めているうちに、その一文字がはみ出してしまった。よくあることです。一字を落としてしまうこともありますね。春の風の心地良さが出ている句で、臨場感たっぷり。

犬とゆく春風うれしたんぼ道    愛知県 野々部静枝(62歳)

  愛犬と歩く人は無数におられます。真冬の季節もその散歩は休まず続けられたのですよね。今日はこの気持ちのよい春風をたのしみながら。そしてその道がコンクリートのそれや山道でなく、「たんぼ道」。広々とした光景を視野に、明るい日の光を全身に受けて。

春風やとこや帰りの首なでる      埼玉県 田中 篤(72歳)

  床屋に行って、さっぱりとされた人。その人の首のあたりを春風がなでる。気持ちのよさがよく出ています。「春風」の題で詠(よ)まれた句として、なかなかユニーク。ともかく実感がこもっていて、存在感のある作品となっています。

春風やうさぎハットの園児たち    奈良県 水尾澄子(72歳)

  かわいいですね。みんなお揃いの「うさぎハット」。にこにことした園児たちの表情が見えてきて、思わず「かわいい」とつぶやいてしまいました。この句、「春風」「うさぎハット」「園児たち」の組み合わせがいいのです。一人だけではつまらない。みんな揃って。ここが絶妙です。

 

 

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【総評】
「雛」という日本語。それは季語でもあります。「雛」「雛祭」「雛の宴」「雛の膳」「雛の間」……。いずれの言葉も明るく豊かな世界につながっていきます。もちろん、悲しい記憶につながる場合もあるのですが、全体としては、家族の絆(きずな)。代々の家族史。父母とこども。祖父母と孫。日本という国に「雛」という季語があり、「雛祭」という伝統行事のある豊かさを、今月のご投句を通して再確認いたしました。

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オルゴール鳴らして雛飾り終ゆ    愛知県 足立和子(71歳)

  お雛様を飾る時間は神経も使いますが、とても嬉しい愉しい時間です。その雛飾りのバックグラウンドにオルゴールを鳴らした。それはとてもこころ和(なご)む時となりましたね。雛飾りの時間がオルゴールの音で満たされた。とても新鮮な雛の句となりました。

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眠ってた雛を出したら気分晴れ    千葉県 齋藤花枝(68歳)

  蔵の中。物置き。押し入れの中。ともかくお雛様はずっと眠っておられたのです。「さあ飾ろう!」と明るい部屋に持ち出した。とたんに作者のこころも晴れてきて……。実感のある句。「気分晴れ」と止めたところも新鮮でした。

桃の日に桃の箸置使いけり    静岡県 松本香代子(66歳)

  「桃の日」に合わせて、箸置きも桃のものに替えてみた。パッと気分が明るくなったのでしょう。雛の日は桃の花を飾るので、「桃の日」ともいうのです。お食事の時間が明るく愉しいものになったのだと思います。「桃の箸置」が目に浮かんできます。桃、桃の花、桃色の明るさがいいです。

雛段の低めの雛の安らけし    東京都 山岸美代子(74歳)

  地味のように思えますが、こういう句も味わいのある佳い句と思います。「雛段」という独特の舞台。最上段から一番下の段まで、飾られる雛はさまざま。低めの位置に飾られた雛を「安らけし」と見て取った作者の感性に共感しました。俳句だから言えた世界でもありますね。

今は開けぬピアノの蓋に男女雛       千葉県 倉澤 宏(81歳)

  昔は年中弾いていたピアノ。今は開けることもなくなってしまったそのピアノの蓋(ふた)の上に、男女のお雛様を飾ってみた作者。ピアノと作者の関わりの歳月。お雛様と作者の歳月。両方が浮かび上がってくる句で、味わいがあります。写実の効いた句のよろしさでもあります。

をんな三世代姦し雛飾る    大阪府 猪瀬 幸(79歳)

  “女が三人寄れば姦(かしま)しい”とはよくいわれます。この句の女性は「三世代」です。それぞれの年代の女性がお元気なのでしょう。三世代の女性が賑やかに話し合いつつお雛様を飾っていくのです。「姦し」と言っておられますが、それはとても愉快な嬉しい時間なのです。いいですね。