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ジパング倶楽部

毎月25日発行

今月の一句    毎月下旬更新

「ジパング倶楽部」会員様から投句いただいた作品を、選者の評とともに掲載します(敬称略)。

※写真はイメージです。

 

 

 

【選者】    黒田杏子(くろだももこ

  東京女子大学入学と同時に山口青邨(せいそん)に入門。卒業後、定年まで博報堂で働く。『広告』編集長などを務め、瀬戸内寂聴をはじめ多くの文化人と親交を結ぶ。30歳から「日本列島桜花巡礼」を単独ですすめ、58歳で満行。「桜と巡礼」の俳人としても知られている。

kuroda momoko

■今月の一句 応募要項

「今月の一句」は、お題に沿った俳句作品をお一人様3句まで(お題ひとつにつき1回限り)ご応募ください。 採用者には、QUO(クオ)カードを進呈します。

1月のお題/新年(11月10日締切。ハガキの場合は当日消印有効)
2月のお題/紅梅(12月10日締切。ハガキの場合は当日消印有効)


応募はこちら

■入選作品発表

haiku10.jpg 10月のお題:    秋風


【総評】
「秋風」という題。詠みやすそうで、そうでもない。なかなか難しい題だったことが、ご投句を拝見して分かりました。しかし、大勢の方が挑戦されて、この「秋風」の題で詠まれた句にはバラエティがありました。ともかくお詠みになることです。多作多捨はそれなりの効果をかならず作者にもたらしてくれます。ひとつの題で十句作ってみる。そこから道が開けてきます。挑戦してみてください。

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宅配の荷物に詰める秋の風    宮城県 中松伴子(66歳)

  宅配便がこれほど普及するとは。たいていのところには翌日到着。こんな世の中がくるなどと、想像していませんでしたが……。この句、「秋の風」がいいですね。春風でも夏の風でも、まして冬の風ではいただけませんね。一句を口ずさんでみますと、こころが広がってきますね。

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秋の風子は背に親子遍路かな    大阪府 三枝桂子(78歳)

  こころ惹かれる句なのでいただきました。お遍路(へんろ)の体験が生きています。幼子を背負って……。父親でも母親でもいいです。秋遍路ですね。いきいきとした親と子の姿がありありと浮かんできます。

秋風や門前町の喫茶店    栃木県 川勾幸子(79歳)

 喫茶店がどこにあるのか。門前町ということで、そのお店が今風のチェーン店ではないということが感じられます。歴史のある町に古くからあるお店。アンティークな印象の珈琲(コーヒー)のおいしい店。そんな感じがします。

秋風や殺生石に石の声    静岡県 山田幸次郎(87歳)

 栃木県那須郡那須町の殺生石(せっしょうせき)。『おくのほそ道』の旅で松尾芭蕉(ばしょう)も立ち寄っています。「殺生石に石の声」という重厚な表現に「秋風や」の上五を付けられたところ、巧いですし、過不足ありません。現場を踏まれた句の存在感があります。

ユトリロの街に佇み秋の風>    大阪府 内本惠美子(67歳)

  「ユトリロの街」、パリを訪ねられた。すばらしいですね。私はユトリロの雪景色の絵も大好きです。これはあの白っぽい画面の作品でしょう。秋風と白という色は合うのですね。実際にそこに佇(たたず)まれた方ならではの作品です。

秋風の祈りの道は谷に沿ひ  和歌山県 市ノ瀬伊久男(70歳)

  和歌山県の方。高野山(こうやさん)への道でもいいですし、西国三十三所第一番青岸渡寺(せいがんとじ)への道でもいい。ともかく「谷に沿ひ」で、その谷川の響きも聴こえてきます。「秋風や」ではなく、「秋風の」とされたところも、この句の場合はよかったと思われます。

 

 

haiku09.jpg 9月のお題:    名月


【総評】
雪、月、花。いずれも大きな季語で、詠むことが難しいと感じる方も多いようです。しかし、今回どなたも月のなかの月をそれぞれ自在に伸びのびと詠まれていて、よろしかったです。ともかく、どんどん詠まれることです。それが句作上達への近道であることは間違いありません。句作によってご自分のうちに眠っている記憶を掘り起こすことはすなわち、人生の活性化につながります。

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名月や沓脱石に座して観る    静岡県 秋山一男(81歳)

  いいですね。ご自宅の沓脱石(くつぬぎいし)でも、月の名所のそれでもいいです。家の中から眺めるのではなく、名月の晩の夜風をもたのしみつつ、どっかりと腰を下ろして天を観る。おおらかで、健やかな身と心の持ち主の句です。

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名月や二次会へ行く仲間達    和歌山県 羽賀 明(66歳)

  そのメンバーに作者も加わっておられるのか、どうか。どちらでもいいですね。こんな月の晩、別れがたいと二次会へ繰り出す。若々しい精神が感じられる句ですね。「仲間達」と止めたところにも親しさが溢れていて好ましいです。

名月やちちははともに眠る山    愛知県 太田裕敏(80歳)

  ご両親が揃って安らかに祀(まつ)られている山。今その墓所の上に照る月。望月の豊かさが、ご両親の豊かな生涯を暗示しているようです。作者ご自身も父上と母上に愛されたのですね。そのお二人を見送られた安堵感が出ています。

名月に今日も平穏目を閉じる    愛知県 村川和子(77歳)

  「今日も平穏目を閉じる」ということは、名月の晩にかぎらない。しかし、まばゆく輝くみごとな月を、たっぷりと仰いだ日のこの想いは格別ですね。作者の想いが過不足なく読み手のこころに伝わってきて、共感を呼ぶ一行となりました。

湯に浮かぶ木の葉わたくしお月さま    新潟県 長谷川ふさを(81歳)

  こんな体験をされた方は多いと思います。露天風呂でしょうね。木の葉と作者とそしてお月さまと。三日月や半月でなく、この月は満月でしょうね。作者の幸せな時間が静かに読み手にも伝わってくる、豊かな作品です。

幼子と仰ぐ名月いつまでぞ    千葉県 若松昭子(69歳)

  この子と年に一度の名月を、あと何年たのしめるだろうか。現在の幸福度が深ければ深いほど、考えてしまう。同じ想いを胸に抱く方は多いと思います。いとしい幼子をかたわらに、ともに仰ぐ月の美しさがこころに沁みます。

 

 

haiku08.jpg 8月のお題:    花火


【総評】
今月もたのしい句、いきいきした句、なつかしい句が揃いました。「今月の一句」へのご投句、たのしみに選句をさせていただきました。「花火」と聞けば、どなたにも豊かな季語の記憶があるのですね。みなさまの作品、いよいよ佳境に入ってきました。すばらしいです。こののちもどんどん作品をお寄せください。

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猫去りてねずみ花火の勝ちにけり    青森県 河村美保(67歳)

  ねずみ花火というものと、生きたネコの組み合わせ。臨場感溢れる作品ですが、何ともいえないユーモアと余韻があります。句作に挑戦することで、ご自分のうちに眠っている、忘れたりもしていた体験に再会できる。これも俳句の恵みなのです。

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手を握るだけの思い出遠花火    東京都 樋山和夫(81歳)

  81歳の樋山さんの青春が語られています。ここにこの一行を投稿されたことで、心のうちに収められていた遠い日の自画像がありありと立ち上ってきましたね。俳句ってすばらしいですね。短いということがかえって雄弁であることを実感します。

病床に音のみを聞く夜の花火    東京都 髙田蓉子(83歳)

  花火を眺めることができなくても、その音を耳で愉しむことが可能です。俳句の季語の豊かさをあらためて知ることができて感動します。つまり、「遠花火」という日本語をじっくりと味わうことも人生のよろこび、豊かさですね。

花火見て首のだるさもふきとんで    岡山県 小野原啓次(79歳)

  あんなに首がだるかったのに。つぎつぎと打ち上げられる花火を夢中で眺めているうち、気がつくとあのだるさは嘘のように吹き飛んでしまっていたと……。大空を見上げることが、首の運動につながっていたのでしょうか。

列車から過ぎ行く町の花火見ゆ       千葉県 伊藤博康(72歳)

  こんな経験はどなたにもあるのではないでしょうか。車窓を流れてゆく町。その町の空に音なく広がる大小の花火の輪、その色彩。「旅情」という日本語も実感できる時ですね。ともかく、過不足なく詠み上げられています。

遠花火帰る娘の下駄の音    大阪府 吉田 穰(78歳)

  ある年代の方には、下駄の音がたまらないなつかしさを呼び起こすのだと思います。その娘さんは浴衣(ゆかた)を着ていると思います。日本中どこの町にも下駄店があった時代。鼻緒をすげたり、下駄の歯を継いだりしてもらったこともあった、日本の暮らし。

 

 

haiku07_02.jpg 7月のお題:    夏の夜


【総評】
俳句っておもしろいですね。どんな題が出ても、それぞれに詠んでみたくなるのですから。今月の作品もいろいろな角度から一行十七音字の宇宙が構築されていて新鮮でした。俳句は誰でも作れます。お元気であれば、100歳からでもスタートできる日本の国民文芸。そのすばらしさを今回も実感しました。

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夏の夜やそぞろ歩きの下駄の音    岐阜県 宇須井等(72歳)

  「夏の夜」、そして「そぞろ歩き」ときて何と止めるのかしらと思ったところ、「下駄の音」。いいですね。履物はお好みでいろいろ楽しめます。作者ご自身でもいいのですが、お連れの方、見かけた人でもいい。過不足のない秀吟です。

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夏の夜の夢に吾より若き父    東京都 酒井 努(89歳)

  お元気で長命を保っておられる作者。夏の夜の夢に、若々しい壮年の活気溢れる父上が登場。おもしろいですね。夢というものの不思議。とてもなつかしかったのではありませんか。俳句ってこんな出合いも詠めるんですね。

砂浜に寝て夏の夜の星数う    東京都 坂田誠太郎(71歳)

  実体験を素直に詠み上げられて、気持ちのいい句になりました。星がよく見えたのですね。寝転んでいるのは砂浜。夏の夜ならではの開放感。少年時代に戻ったようなこころのときめき。でも作者70代。そこがすばらしい。

幽霊は真夏の夜が好きらしい    京都府 佐藤 瞳(77歳)

  冬や春、秋でもダメですね。幽霊といえばやっぱり夏。そこを「真夏の夜が好きらしい」と詠み上げて、印象深い句になりました。こういう表現も俳句ではよろしいのです。どうぞみなさま、思い切って自在に句作を愉しんでください。

待合はす居酒屋夏の夜の会話       東京都 今田 克(85歳)

  居酒屋へ出かけて行かれる85歳の作者の健やかさ。頼もしいですね。そして「夏の夜の会話」です。愉しい話、聞かせたい話など、いろいろあって待ち合わせたのです。闊達(かったつ)な作者の存在を頼もしく思い、元気をいただきました。

夏の夜の北へ最終列車待つ    青森県 田端朝雄(68歳)

  北へ行く最終列車。青森からだと北海道でしょうか。夏の夜ですからもちろん、寒くもないし、さみしくもない。たっぷりと旅情を含んだ句で心地よいですね。夜風を、つまり旅の夜風を感じさせてくれた作品でした。