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今月の一句

「ジパング倶楽部」会員様から投句いただいた作品を、選者の評とともに掲載します(敬称略)。

毎月下旬更新。

  • 特選に選ばれた作品は、氏名、住所(都道府県名)とともに本誌に掲載します。
  • 写真はイメージです。

選者

黒田杏子(くろだももこ)

東京女子大学入学と同時に山口青邨(せいそん)に入門。卒業後、定年まで博報堂で働く。『広告』編集長などを務め、瀬戸内寂聴をはじめ多くの文化人と親交を結ぶ。30歳から「日本列島桜花巡礼」を単独ですすめ、58歳で満行。「桜と巡礼」の俳人としても知られている。

  • 黒田杏子

今月の一句 応募要項

「今月の一句」は、お題に沿った俳句作品をお一人様3句まで(お題ひとつにつき1回限り)ご応募ください。採用者には、QUO(クオ)カードを進呈します。

12月のお題/雪(10月10日締切。ハガキの場合は当日消印有効)
1月のお題/富士(11月10日締切。ハガキの場合は当日消印有効)

  • 8月のお題からは、特選に選ばれた作品、氏名、住所(都道府県名)を本誌に掲載します。

入選作品発表

9月のお題:秋の夜

【総評】
今、瀬戸内寂聴さんの第一句集『ひとり』(深夜叢書社刊)が人気を集めています。95歳となられた昨年の5月15日が発行日となっていますが、96歳となられた現在、なんと8刷に向かっています。作家・僧侶・社会運動家として、たゆみない活動を維持しておられるバリバリの現役人生。1頁に1句。わずか85句を収めたこの句集は寂聴さんの人生絵巻そのもの。みなさまのご投句もまたそれぞれの人生のワンショット。素晴らしかったです。

特選

ゆっくりと雲が流れる秋の夜  宮城県 鈴木 武志(69歳)

おおらかにしてかつシンプル。大空を雲が流れてゆく。そのことだけを詠み上げられて読み手のこころに共感を呼び起こす。「秋の夜」という季語を座五に置いてゆるぎません。俳句っていいですね。事実をそのままに述べて1行17文字の宇宙に収める。これ以上述べる必要なし。秀吟となりました。

秀句

筆持ちて歌作りたる秋の夜  和歌山県 竹中 佳子(71歳)

風雅ですね。心のゆとりがこの句のいのち。パソコンの文字ではない。万年筆やボールペンの文字ではない。ともかく筆持ちて。墨を磨(す)らずに筆ぺんでもいいのです。自作の歌を毛筆で紙にしたためる。何と豊かな時間。

秋の夜に引き込まれゆき寝て仕舞ふ  山形県 松田 弘三(78歳)

たのしい、愉快な句ですね。秋の夜っていいなあと思って、つまり秋の夜を堪能しているうちに、その秋の夜に引き込まれていって気がつくと、気分よく、つまりここちよい眠りの底に落ちて安らかに寝息を立てておられた。という句。「仕舞ふ」の三文字がおもしろいですね。

秋の夜ベストセラーを読破する  埼玉県 戎 武子(78歳)

読書する人々が減っている。とはよくいわれることですが、私はそうは思いません。若い人でも熟年の人でも本を読むことが好きな人は昔も今も大勢おられます。この方は「ベストセラー」を一冊、秋の夜長に読破されたというのです。「読破」という日本語、いいですね。

秋の夜や昼間叱りし子等をふと  愛知県 重留 香苗(66歳)

さりげなく詠まれていますが、作者の気持ちがよく伝わってくる句です。日中叱りつけてしまったお子さんたち、それぞれのことを秋の夜長にふと想い返す。春の夜でも夏の夜でも、まして冬の夜でも成り立たないことが分かりますね。

秋の宵ひとり赴任の飯支度  福岡県 長野 政明(68歳)

単身赴任の方は世の中に無数におられます。ひとり男性が食事をしつらえる。という俳句は無数にあります。「独り飯」という句も多いのです。この句、「秋の宵」と「飯支度」という二つの言葉が響き合って、作者の想いが過不足なく伝わってくるのです。季語の力ですね。

8月のお題:お盆

【総評】
「お盆」という題に対して、じつにさまざまな角度から詠まれた俳句作品が寄せられました。そのことをとても嬉しく思い、愉しく選句作業を進めました。「盆の膳」「盆の風」などの季語がいきいきと一句の中に働いている。「季語は日本人の暮らしのインデックス」と言ったのは、物理学者で俳人でもあった寺田寅彦でした。「盆踊り」「新盆(にいぼん)」「盂蘭盆会(うらぼんえ)」などなど。これを機にお盆の句をいろいろと案じてみてくださることを提案したいと思います。

特選

母まねて母に供ふる盆の膳  兵庫県 久新 秀子(76歳)

お母様が作っておられたお盆のお膳。それを大切にこころに呼び出し、作者が今はそのお膳を整える役割を担当しておられる。「母まねて母に供ふる」……。ここまで読んで涙がにじんできました。こういう風に盆行事は伝えられていく。素晴らしい暮らし。「盆の膳」という季語が生きているのですね。

秀句

新盆の兜太に標作ろうか  埼玉県 米山 直昭(76歳)

去る2月20日に長逝された俳人・金子兜太(とうた)さん。98歳の現役大往生を果たされ、追悼句が各紙誌の俳壇欄に今なお、寄せられています。兜太さんが還ってこられるための「標(しるべ)」を整えよう。というお気持ちの込められた句でこころに残ります。

合掌へ閉じ込めている盆の風  大阪府 井端 幸子(79歳)

「盆の風」という季語を詩的に生かされた作品だと思います。「合掌(がっしょう)」の両手に盆の風を包む。かの世に旅立たれている人々への想いが深々と表現されています。このような句もとても貴重だと思います。新鮮な「お盆」の句です。

待ってました郡上八幡盆踊り  愛知県 加藤 賢二(84歳)

岐阜県の「郡上八幡(ぐじょうはちまん)」の盆踊りは有名です。ともかく1カ月あまり踊り続けるのです。私も何度も郡上を訪ねて、その踊りを体験しております。徳島県の阿波(あわ)おどりや富山県のおわら風の盆などとともに郡上八幡の盆踊りは有名。ぜひ一度、郡上に行ってみてください。

お盆には先祖も孫も皆集ふ  福岡県 長野 政明(68歳)

一句の中に「孫」という文字が入りますと、その句はだいたい甘くなってしまって、作品としてはなかなか成功しないことが多いようです。しかし、この句「先祖も孫も皆集ふ」でいきいきとしたご一家の様子が見えてきます。当たり前と思われる方には、実際にはこういう場面の句が激減していますとお伝えしたいのです。

予科練の友は童顔盂蘭盆会  千葉県 菊地 正男(88歳)

「予科練」は海軍飛行予科練習生の略称。1930(昭和5)年創設の飛行搭乗員養成制度でした。予科練と聞いても、理解できない人がほとんどという現実になってきています。米寿(べいじゅ)を迎えられた作者の胸に生きている友は、「童顔」のままなのです。

7月のお題:夕立

【総評】
回を重ねるごとに、投句作品の幅が拡大されてくるように思われます。60代から80代の方々が圧倒的に多いということも、存在感のある句が多いということと関係があるのだと思います。俳句は息を引き取る直前まで詠める、世界最短の詩型。年輪を重ねられた方々が味わいのある作品をどしどし発表されること。そのような方々の句の選を担当できることを私は嬉しくありがたいと思っております。

特選

縁に足垂らしおしやべり夕立の子  兵庫県 瀬々 英雄(70歳)

お孫さんの姿かもしれません。雨脚を眺めながら仲良し2人おしゃべりをしているのです。足を垂らすことのできる縁側。懐かしいです。作者ご自身のこども時代を思い出し、一瞬に詠み上げられた句という感じがします。「夕立の子」、ここも愉しいです。

秀句

「猛犬注意」の軒先を借る大夕立  埼玉県 道山 省二(79歳)

「大夕立」がきて、ともかく飛び込んでしまった見知らぬお宅の軒。気がつくと、「猛犬注意」との表示。何ともいえない臨場感、そしてユーモアがあります。大夕立です。ともかくその軒先をお借りするしかなかったのです。夕立の句として、新鮮かつ味わい十分。

夕立や砂場に赤い靴一つ  大阪府 岡田 恵子(70歳)

その赤い靴は片一方しかなかった。「夕立」と「砂場」の取り合わせは決して珍しくないのですが、そこに雨をためている小さな「赤い靴」。「一つ」と止められて成功です。「夕立」「砂場」「赤い靴」。この3つの色彩が醸(かも)し出す世界が印象深いのです。

夕立や父の野良着に土匂う  香川県 高島 緑(64歳)

とても具体的にていねいに詠み上げられています。「夕立」がきて、「野良着」の土の匂いがするというリアリズム。「父の野良着」ですが、もしかすると回想の句かもしれません。ともかく、夕立の景の中に立ち上がる父上の姿。

故郷の夕立に会えばなつかしや  東京都 松岡 正治(83歳)

帰郷されて詠まれた作品でしょう。「故郷」で「夕立」に会う。こどもの頃からのさまざまな場面が懐かしく去来する83歳の作者。とても自然な句で、素直に率直に詠み上げられているところが魅力です。夕立という季語の題詠で生まれた佳吟(かぎん)ですね。

トンネルを抜ければ越後夕立晴  千葉県 三澤 正弘(77歳)

地名が効いている句と思います。俳句では新潟県といわず「越後(えちご)」。長野県といわず「信濃(しなの)」と書くことによって、風土感が出るのだと思います。「夕立晴」は「ゆだちばれ」と読んで五音になります。新潟県の山河が青々と眼前に浮かんできますね。

6月のお題:田植え

【総評】
選者として、今回ほど愉しく懐旧の思いを刺激された月はありませんでした。1938(昭和13)年、東京の本郷で生まれた私は、1944年の10月に父の郷里、栃木県に疎開。父の生家・旧那須郡下江川村上川井(なすぐん・しもえがわむら・かみかわい/現在の那須烏山<なすからすやま>市)に一家で暮らし、1945年4月に小学生となり、8月に終戦。大きな農家であった父の家で6年間、田植えをはじめとする農作業に積極的に参加したのです。今日俳人のはしくれとして生き延びております私の原点が、この村にあるのです。

特選

遠き子へ今日の田植えの便り書く  大阪府 入山 英介(67歳)

いかにも若々しい農業者の暮らしぶり。都市労働者として生活しておられるお子さまに、「今年も無事田植えが済んだよ」と手紙をしたためられた。電話でもメールでもない。その文面、筆跡が目に浮かびます。「遠き子へ」「今日の」。ここがじつにみごとです。秀吟。

秀句

畔座敷料理振る舞う田植かな  静岡県 我妻 伊佐子(75歳)

「畔(あぜ)座敷」とは素晴らしい。「畔」は「畦」とも書きます。田と田の間に土を盛り上げて境としたもの。「くろ」とも読みます。田植えをする人々を励まし、祝うために、ご馳走(ちそう)を整え、畔座敷をしつらえて、昼食をとってもらうのです。働いて空腹でいただくメニューはすべておいしい。弾けるような元気いっぱいの会話が聞こえてくるようです。

水神に詣でてよりの田植かな  静岡県 矢野 悦子(70歳)

田んぼは水が命。水神様は大切な守り神様。さらりと詠まれていますが、日本の稲作の根幹をしっかりととらえ、表現された作品に敬意を表したいと思います。昔のことではなく、現在のことを詠まれた句と受け止めました。手植えから田植え機に変わっても、変わらない日本人のこころ。尊いことです。

一村が水を絆の田植かな  三重県 伊藤 元(87歳)

田んぼはすなわち水田。水が命です。村じゅうの田植えは水があってのもの。よい水を田に回らすことが大切。水源を守り、その佳き水を分かち合う。このことが明快に詠み上げられた句で、存在感十分の一行。87歳の作者が未来に向かって語りかけ、語り継いでくださっている。そのように感じて、いただきました。

田植見る祖父母座りて土手に居り  山口県 林 一(80歳)

お若い時は早乙女(さおとめ)として、熟年になられてからは一家の大黒柱として、田植えを仕切られた女性なのではないでしょうか。ともかく年輪を重ねて、祖父母様はもう作業はされないけれど、土手に座って一家の田植え作業を見守ってくださる。生涯現役とはこの方々にこそ捧げたい日本語ですね。

休校の楽しみありし田植えどき  大阪府 衞藤 聰一(78歳)

ありました。ありました。下江川村では昭和20年代、「農繁休校」と称して、学校は休み。こどもたちも苗運びや昼食を田んぼに届ける。実際に田植えを手伝うなど、みなそれぞれに役目が与えられて、張り切って働いたのでした。勉強が嫌いな子にも神様はちゃんと目配りをしてくださっていたのでした。

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