TOP商品・サービス出版物ジパング倶楽部 > 今月の一句

今月の一句

「ジパング倶楽部」会員様から投句いただいた作品を、選者の評とともに掲載します(敬称略)。

毎月下旬更新。

  • 特選に選ばれた作品は、氏名、住所(都道府県名)とともに本誌に掲載します。
  • 写真はイメージです。

選者

黒田杏子(くろだももこ)

東京女子大学入学と同時に山口青邨(せいそん)に入門。卒業後、定年まで博報堂で働く。『広告』編集長などを務め、瀬戸内寂聴をはじめ多くの文化人と親交を結ぶ。30歳から「日本列島桜花巡礼」を単独ですすめ、58歳で満行。「桜と巡礼」の俳人としても知られている。

  • 黒田杏子

今月の一句 応募要項

「今月の一句」は、お題に沿った俳句作品をお一人様3句まで(お題ひとつにつき1回限り)ご応募ください。採用者には、QUO(クオ)カードを進呈します。

6月のお題/紫陽花(4月10日締切。ハガキの場合は当日消印有効)
7月のお題/金魚(5月10日締切。ハガキの場合は当日消印有効)

  • 特選に選ばれた作品、氏名、住所(都道府県名)を本誌に掲載します。

入選作品発表

3月のお題:芽

【総評】
 「芽」という一文字からさまざまな句が生まれました。森に冬芽を見にゆく人。木々の芽吹きの音を聴きとめたいと希(こいねが)う人。てんぷらにしたら最高の楤(たら)の芽を摘んだ人。紫木蓮の巨(おお)きな芽ごしらえに目をとめた人。木の芽和をよろこび満喫する人。剪定で剪り落とす枝先の芽に申し訳ないと思う人。今月も、新鮮で存在感のある秀句が揃いました。それぞれの人生が豊かに反映されている句、素晴らしい作品群に圧倒されました。

特選

ポケットのルーペ冬芽の森散策  新潟県 吉野敬子(76歳)

さまざまな森の木々。その冬芽を観察するために、ルーペを持って森に入る。とても新鮮な句です。新潟県の方。森の中はまだ寒いでしょう。防寒具をきちんと身につけて出かけてゆく。76歳の作者の好奇心は素晴らしい。作者が女性であることも頼もしいですね。

秀句

補聴器よ聞かせて木々の芽吹く音  山口県 浅谷寿々也(86歳)

木々の芽吹く音を聴きたい。補聴器を使っておられる作者のこの若々しい発想。とても新鮮な句と思いました。実際に芽吹く音は聴きとれないのですが、早春の木々のざわめきを感じさせてくれます。そして何よりのこの句の魅力は、現代性がたっぷりということ。

ハンカチに楤の芽少し雨後の山   大阪府 吉田 穰(80歳)

楤の芽を「雨後の山」に見つけて、摘みとられた。そっとハンカチに包んで大切に持ち帰る。雨後の山がよく効いています。すべての木の芽が勢いを得ていきいきとみずみずしい。事実をありのままに詠みあげられてじつに気持ちのよい句になっています。

早々と芽拵へして紫木蓮   和歌山県 市ノ瀬伊久男(72歳)

木蓮は大きな花。そして紫木蓮(しもくれん)はとりわけ大きな花です。よく見て詠まれた句です。「芽拵(めごしら)え」という言葉がうまく使われています。花開けば巨大ともいえる紫木蓮。その花芽が読み手にもよく見えてきます。「早々と」、この書き出しもよかったと思います。

木の芽和妻の故郷の香りせり  千葉県 伴野丞計(74歳)

奥さまのふるさとはどこなのでしょうか。何かとても豊かな気持ちになった句でした。「木の芽和(あえ)」というものと故郷、それも「妻の故郷の香り」といわれて仲むつまじいご夫妻の暮らしが思われるのです。「芽」という題からこのようにこころのなごむ作品が生まれたこと、素晴らしいと思います。

枝先の芽も剪り落とす鬼となり   青森県 大川 知(70歳)

剪定(せんてい)という作業をされての作品でしょうか。木の枝を剪(き)り詰めてゆくとき、そこに生きている芽も剪ってゆく。その作業を進めるご自分を「鬼のようだ」と感じておられる句ですね。「枝先の」、この五音三文字がよく作者の想いを伝えてくれているのですね。

2月のお題:鶯

【総評】
「鶯」という題を出されて、句を作る。俳歴のある人ほど難しいのではないでしょうか。今回寄せられた句はどれも新鮮。手慣れた句、手あかのついたような句は一句もなかったことに驚き、とても豊かな読後感を愉しみました。頭の中で無理にひねった句。先行句、例句などを参考にして知的にまとめあげた作品は一句もありませんでした。そのような句は採用されない、ということをご存じの方ばかりの句の選句作業は愉しかったです。

特選

鶯の啼く故郷に母ひとり  大阪府 内本惠美子(68歳)

故郷に母上がひとり暮らしをされている。こういう状況はよくあることで、誰にでも了解されること。しかし、この句、「鶯の啼く故郷に」という上五と中七の言葉のあっせんによって一句のイメージが広がり、共感度が増しました。鶯という誰でも知っている野鳥の名前の力もあり母と娘の心の絆がみごとに、過不足なく表現されています。

秀句

鶯が鳴いたよ祖父が植えた山   香川県 玉井一郎(85歳)

とても豊かな気分になります。祖父が木を植えたその山に響きわたる鶯の声。誰でも詠める句ではありません。そのような山が存在すること。そのことを鶯に托して詠みあげることができたこと。作者の嬉しさ、充足感を私たちもたっぷりと享受させていただける作品です。一読、心がはればれとしてきます。

雨上る一声青き初音かな   三重県 伊藤 元(87歳)

「雨上る」と始まるこの句。「一声(いっせい)青き」、ここのところで胸が躍り、「初音かな」と止められて何ともいえないすがすがしい心地となるのです。雨上ると初音かな。この二つの五音の言葉のブロックの真ん中に置かれた「一声青き」、この七音字の力がこの句の決め手です。身も心も蘇(よみがえ)ってくる秀吟と思います。

鶯の礼文林道一人旅   千葉県 大河原倫子(77歳)

千葉に暮らす作者がはるばる北海道の礼文島(れぶんとう)まで足を運ばれた。そこで得られた一句には圧倒されます。事実をありのままに詠まれている句の力、よろしさが出ています。礼文林道という場面設定。一人旅もいいですね。そこに何と響きわたる鶯の声。作者の満足感、幸福感が私たちにもそっくり手渡される。そのよろこび。

鶯に一声真似て応へけり   静岡県 矢部輝夫(75歳)

よくあること。その体験を素直に素朴にそっくり詠みあげられた句のよろしさ。添加物のない、山の真清水(ましみず)を飲み干したような気分になる句。俳句を詠むとき。「素直に、素朴に」ということを実行することは難しい。大人の作者の内に棲(す)み続ける童心がこの飾らない一行を生んだのだと思います。

鶯の声に暦をめくる朝   山梨県 伊藤政雄(77歳)

日めくりの暦でしょう。毎日一枚めくるのです。そのある日、ある朝のこと、鶯の声を聴きとめられたのです。その幸福感、そのよろこびが、そっくり飾らずに詠みあげられています。都会では鶯の声を朝聴きとめることはほとんど不可能。山梨県にお住まいの方の至福の時間を想いました。口ずさむほどに心の晴れてくる句ですね。

1月のお題:富士

【総評】
富士山を知らない人はおられません。しかし、誰でもが知っているこの山を句に詠むことは意外に難しい。初富士とか夏富士とか季節感のある句にまとめますと、詠み手と読み手の共感度が高まります。日本各地にその地方の○○富士と呼ばれる山があることも愉しいことです。日本を訪れる各国の人々にとっても、富士を仰ぐことは喜びでありこの山が憧れの山であることは私たちの誇りです。バラエティー豊かな句が揃いました。

特選

富士好きの父に冠雪知らせけり  千葉県 渡部和秋(83歳)

「富士好きの父」。まずここがいいですね。富士山を嫌いという人はめったにおられないでしょうが、お父上は富士山大好きの方。その方に、「富士が山雪を冠ったよ」とお電話をされたのでしょう。それは遠い日のことであってもよろしいのです。父と子の絆はずーっと切れずに続くのです。

秀句

冠雪の富士を見たさに空を飛ぶ   山口県 前川紘子(77歳)

この気持ち、よく分かります。空から眺めよう、と思って飛行機に。上空から眺めると、さして美しいものではないのですが、作者のこの行動力は若々しくて、読み手のこころも弾んできます。簡潔に詠みあげて、印象鮮明、共感を呼ぶ一行となりました。

化粧なき富士の全容秋闌くる   山形県 木嶋千春(79歳)

「秋闌(た)くる」。こういう富士山のとらえ方もまた新鮮ですね。ありのままの姿で堂々とそびえる山容。このような詠み方で富士山を讃えるには技術が要りますから、これまであまり発表されていません。ズバリとこの山の存在感を言いとめたところ、ご立派だと思いました。

稲束を富士より高く放り投げ   茨城県 早雲 直(66歳)

稲刈りをしていての作品。このような作品は巧みである必要はなく、いかにその実感を素朴に過不足なく言いとめるかです。作者自身が農業者ではなく、その場を通りかかって思わず詠み上げた句であってもかまいません。その現場に身を置かれた臨場感がこの句の命。よく晴れた日の遠富士(とおふじ)の美しさ。

富士遂に登らず過ぎぬ古希の秋   茨城県 衛藤基邦(74歳)

同じような思いを噛みしめる方も多いでしょう。いつかは……と思いつつ、気がつくと70歳を越していた。100歳以上の方が何万人もおられる時代。70歳なんて若い若いといわれても、富士登山となればハイキングとは異なります。「遂に」。この言葉がじつによく効いているのです。

あたたかや富士を眺めて観覧車   福岡県 木本美也子(74歳)

愉しく、こころが豊かに拡がってゆく時間。観覧車に乗って富士山を眺める。「あたたかや」の季語に満ち足りた人生の時間も感じられます。一生の中のある日、ある刻(とき)。一行十七音字に記録されたまたとない体験。こういう句にも出合えて嬉しいことでした。

12月のお題:雪

【総評】
「雪」を詠むことは比較的簡単だったのではないでしょうか。無理のない詠みぶりの作品が寄せられたという印象でした。私は80歳です。北関東は栃木県北部の農村で小学生時代を過ごしました。昭和20年代のこと。当時は冬にはかなり雪が降り、積もりましたが、近年はほとんど雪は降らず、降っても積もりません。雪の句を選ぶ時間は懐かしく、愉しいものでした。いきいきとした句が多かったと思います。

特選

雪の夜のコンビニエンスストアの灯   神奈川県 内藤敏子(64歳)

実景をありのままに詠まれた句ですが、コンビニというものの存在感がよく出ていて、現代を簡潔に切り取っていると思います。人通りの多い所ではなく、淋しい場所のコンビニ。そんな感じがします。いずれにしてもこの灯は頼りになる。巧い句だと思います。

秀句

入試へと一人発つ娘に雪が舞う   福岡県 阿部道子(83歳)

この娘さんは作者のお孫さんでしょう。雪の中をたった一人出かけてゆく。入試という大きな場面に向かって。「一人発つ娘(こ)」という表現に深い愛情が感じられます。合格を祈る気持ちと無事に会場に着いてほしいという願いが素直に表現されています。

しんしんと産院の窓牡丹雪   岡山県 長倉節子(69歳)

ご自身の体験を回想された句でも、娘さん、お嫁さんの産院滞在の句、いずれでもよろしいと思います。新しい生命を待つ空間。その窓に舞う牡丹雪。印象深いシーンが一行十七音字の世界に構築されています。

陸奥は雪と聞きつつ旅仕度   兵庫県 中本正明(74歳)

関西に住む作者。テレビかラジオが、「みちのくは雪です」と伝えている日。作者はいずこかに旅立とうとしている。雪と聞きつつ。ここがこの句のポイント。作者の旅の行く先は明らかではありませんが、「雪」という季語を鮮やかに生かし切った作品です。

雪の夜や時計の音に寝つかれず 埼玉県 古川恵津子(64歳)

静かな静かな雪の夜。時計の音が妙に大きく響いてくる。その音が気になって、寝つかれない。こんな体験、よくある気がしてきます。ささやかな事ですが、作者にとってはこのままずっと眠れないのではないかと不安。そんな気持ちが大げさでなく詠みあげられています。

今朝もまた除雪の音に目覚めけり   山形県 今野吉見(84歳)

除雪車の音でしょう。毎朝のことなのですね。「ああ、またあの車の響きが……」。と思いつつ目が覚める。いかにも雪国の人の句。素直にそして率直に詠みあげられた句のよさですね。読み手にもその音が胸に響いてきます。

ジパング倶楽部会員様ページ

お問い合わせ

読者投稿コーナーへの応募は
こちらから。(会員限定)