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今月の一句

「ジパング倶楽部」会員様から投句いただいた作品を、選者の評とともに掲載します(敬称略)。

毎月下旬更新。

  • 特選に選ばれた作品は、氏名、住所(都道府県名)とともに本誌に掲載します。
  • 写真はイメージです。

選者

黒田杏子(くろだももこ)

東京女子大学入学と同時に山口青邨(せいそん)に入門。卒業後、定年まで博報堂で働く。『広告』編集長などを務め、瀬戸内寂聴をはじめ多くの文化人と親交を結ぶ。30歳から「日本列島桜花巡礼」を単独ですすめ、58歳で満行。「桜と巡礼」の俳人としても知られている。

  • 黒田杏子

今月の一句 応募要項

「今月の一句」は、お題に沿った俳句作品をお一人様3句まで(お題ひとつにつき1回限り)ご応募ください。採用者には、QUO(クオ)カードを進呈します。

3月のお題/芽(1月10日締切。ハガキの場合は当日消印有効)
4月のお題/桜(2月10日締切。ハガキの場合は当日消印有効)

  • 特選に選ばれた作品、氏名、住所(都道府県名)を本誌に掲載します。

入選作品発表

12月のお題:雪

【総評】
「雪」を詠むことは比較的簡単だったのではないでしょうか。無理のない詠みぶりの作品が寄せられたという印象でした。私は80歳です。北関東は栃木県北部の農村で小学生時代を過ごしました。昭和20年代のこと。当時は冬にはかなり雪が降り、積もりましたが、近年はほとんど雪は降らず、降っても積もりません。雪の句を選ぶ時間は懐かしく、愉しいものでした。いきいきとした句が多かったと思います。

特選

雪の夜のコンビニエンスストアの灯   神奈川県 内藤敏子(64歳)

実景をありのままに詠まれた句ですが、コンビニというものの存在感がよく出ていて、現代を簡潔に切り取っていると思います。人通りの多い所ではなく、淋しい場所のコンビニ。そんな感じがします。いずれにしてもこの灯は頼りになる。巧い句だと思います。

秀句

入試へと一人発つ娘に雪が舞う   福岡県 阿部道子(83歳)

この娘さんは作者のお孫さんでしょう。雪の中をたった一人出かけてゆく。入試という大きな場面に向かって。「一人発つ娘(こ)」という表現に深い愛情が感じられます。合格を祈る気持ちと無事に会場に着いてほしいという願いが素直に表現されています。

しんしんと産院の窓牡丹雪   岡山県 長倉節子(69歳)

ご自身の体験を回想された句でも、娘さん、お嫁さんの産院滞在の句、いずれでもよろしいと思います。新しい生命を待つ空間。その窓に舞う牡丹雪。印象深いシーンが一行十七音字の世界に構築されています。

陸奥は雪と聞きつつ旅仕度   兵庫県 中本正明(74歳)

関西に住む作者。テレビかラジオが、「みちのくは雪です」と伝えている日。作者はいずこかに旅立とうとしている。雪と聞きつつ。ここがこの句のポイント。作者の旅の行く先は明らかではありませんが、「雪」という季語を鮮やかに生かし切った作品です。

雪の夜や時計の音に寝つかれず 埼玉県 古川恵津子(64歳)

静かな静かな雪の夜。時計の音が妙に大きく響いてくる。その音が気になって、寝つかれない。こんな体験、よくある気がしてきます。ささやかな事ですが、作者にとってはこのままずっと眠れないのではないかと不安。そんな気持ちが大げさでなく詠みあげられています。

今朝もまた除雪の音に目覚めけり   山形県 今野吉見(84歳)

除雪車の音でしょう。毎朝のことなのですね。「ああ、またあの車の響きが……」。と思いつつ目が覚める。いかにも雪国の人の句。素直にそして率直に詠みあげられた句のよさですね。読み手にもその音が胸に響いてきます。

11月のお題:落葉

【総評】
「落葉」。これなら詠める。一句作って投稿してみよう。と思われた方が多かったのではないでしょうか。身近で、よく知っている題材が意外に詠みこなせない。という体験を多くの方が経験しておられると思います。今月の作品、しかし、どの句にも存在感がありました。回想の句であってもよろしいのです。ともかく俳句を作ることによって、どなたもその身と心が活性化する。これは間違いのない事実。選句は私の天職です。

特選

耳鳴りが止みて落葉の音を聴く   神奈川県 栗村節子(77歳)

「落葉の音」を聴きとめる。かそけきその音を聴きとめることは詩人のよろこび。句に詠むことは俳人の誇りでしょう。しかし作者は耳鳴りという持病に悩む身。その耳鳴りがおさまったときに落葉の音を聴きとめられた。という一行です。落葉の句として類句・類想がありません。さりげなく詠まれた秀吟として、その瞬間を作者とともにうれしく享受いたしました。

秀句

落葉掃き挨拶交わす隣組   東京都 久保田英夫(79歳)

 このような暮らしを素晴らしいと思い、こういう「隣組」が存続していることに感動いたします。都心はあっという間にマンションで埋め尽くされ、隣組・町会という組織は残っていますが、戸ごとに落葉を掃くというような暮らしはめったにありません。東京も広いです。街路樹は都心にもあります。この句の味わいは素晴らしいものです。

小さき庭禅僧のごと落葉掃く   青森県 大川 知(70歳)

 これはまたユニーク、かつ新鮮な句です。庭が小さい。従ってその庭木も多くはない。しかし、落葉は必ず降ってきます。その狭庭(さにわ)の多くはない量の落葉をていねいに掃き、清らかな庭にする。自分自身のその行動を「禅僧のごと」と言い切った。そこがこの句の見どころ。床を磨くことも庭を掃き清めることもすべて禅宗の僧の修行。禅僧のごと。ここがポイントの句。

落葉焚き煙のなかに父笑ふ   千葉県 若松昭子(70歳)

 これはおそらく回想の句。もちろん、只今、現在の句であってもすばらしい。70歳の作者の心に父上と「落葉焚き」をされた少女の頃の記憶がずっと生き続けているのです。「煙のなかに父笑ふ」。なんとも幸せだった時間。父上のこの笑顔は永遠。いつも作者を励まし続けられる存在なのです。

落葉踏む誰か来そうで誰も来ず  三重県 伊藤 元(87歳)

 人間の心理をうまく表現されています。「誰か来そうで誰も来ず」。ここに「落葉踏む」という季語を持ってこられた。なかなかおもしろいですね。おそらく実体験を踏まえられての句なのでしょうが、フィクションであってもいい。これは17音字のドラマです。

小判めく桜落葉の色かたち   岩手県 野村亮子(79歳)

 とても具体的に詠み上げられた句。そこがこの句の命です。「桜落葉」、それは濃い紅色かもしれませんし、黄金色かもしれません。「小判めく」で桜落葉の形が提示され、加えて「色かたち」と止めたことで、さらにその桜落葉の存在感が強調されています。一枚の桜落葉を今、掌中(しょうちゅう)にされている、その実感が愉しい句を創り出しているのですね。

10月のお題:菊

【総評】
昔から日本人に好まれてきた秋の花の代表ともいうべき菊花。とりわけ、文人、墨客(ぼっかく)、画家などがこの花を賞(め)でました。菊作りをする人も多く、また、菊の花にもいろいろの種類があります。今回の投句作品もさまざまな角度から詠まれていて愉しいことでした。実体験を踏まえられて詠まれた一行には存在感があります。誰もがよく知っている花を詠むことは意外に難しい面もありますが、味わい深い作品が揃ったと感じました。

特選

幸せの鐘鳴り渡る菊日和   青森県 河村美保(68歳)

「菊日和」という文字をみただけで、心が晴れ晴れとしてきます。この句、その菊日和の日に「幸せの鐘」が鳴り渡ったというのです。どのような折の鐘の音であれ、読み手も幸せな気分に包まれてゆきます。秋晴れ、そして菊の香の溢れるその日。素晴らしい句ですね。

秀句

遠き日の祖父母育ちや菊なます   福井県 伊上はるゑ

幼き日、作者は父母ではなく、祖父母に護られて育てられた。その時代の食卓には秋になると、よく「菊なます」が登場したのです。今、作者は還暦を過ぎ、菊なますを好まれるのでしょう。こどもの時代には格別好きではなかったこの菊なます。祖父母の愛を懐かしみ、しみじみと味わう作者の表情が浮かびます。

母は逝き子は生まれきて菊咲けり   茨城県 衛藤基邦(74歳)

逝かれる母上。お孫さんでしょうか。新しい生命がこの世に誕生する。さりげなく詠まれていますが、この世に今在る自分をしっかりと見つめ、命の不思議と素晴らしさに感動している作者のこころが「菊咲けり」の季語に托されてよく表出されています。

めぐり来てまた賞受けし菊の前   東京都 酒井 努(90歳)

菊花展という催しがあります。菊作りに打ちこむ方々のコンペティションの場であり、菊花を愛する人々がその菊のみごとさ、美しさを堪能できる場でもあります。大賞・特賞・入賞など受賞菊には札が付きます。展示の菊をめぐってきて、再び受賞菊の鉢の前に。実感溢れる句です。

結婚式父の作りし菊の道  石川県 西多喜代子(66歳)

ウェディングロードでしょう。その道を菊作りに打ち込んでこられた花嫁の父上が、菊花で作りあげられた。とりどりの菊の花びらを敷き詰めたものであってもいいですし、両側に鉢の菊を並べたものであってもいい。ともかく、「父の作りし菊の道」に感動しました。

女子会の一団降りる菊の駅   静岡県 中川正男(83歳)

女子会という言葉、あっという間に日本中に広がり、完全に定着しましたね。菊の名所の駅。菊花展または菊人形で知られた町の駅。そこに女子会の一団が賑やかに下車。はなやぎと生命感溢れる世界が現出しました。菊の駅は菊花の鉢がぎっしり並べられている駅でもよろしいと思います。

9月のお題:秋の夜

【総評】
今、瀬戸内寂聴さんの第一句集『ひとり』(深夜叢書社刊)が人気を集めています。95歳となられた昨年の5月15日が発行日となっていますが、96歳となられた現在、なんと8刷に向かっています。作家・僧侶・社会運動家として、たゆみない活動を維持しておられるバリバリの現役人生。1頁に1句。わずか85句を収めたこの句集は寂聴さんの人生絵巻そのもの。みなさまのご投句もまたそれぞれの人生のワンショット。素晴らしかったです。

特選

ゆっくりと雲が流れる秋の夜  宮城県 鈴木 武志(69歳)

おおらかにしてかつシンプル。大空を雲が流れてゆく。そのことだけを詠み上げられて読み手のこころに共感を呼び起こす。「秋の夜」という季語を座五に置いてゆるぎません。俳句っていいですね。事実をそのままに述べて1行17文字の宇宙に収める。これ以上述べる必要なし。秀吟となりました。

秀句

筆持ちて歌作りたる秋の夜  和歌山県 竹中 佳子(71歳)

風雅ですね。心のゆとりがこの句のいのち。パソコンの文字ではない。万年筆やボールペンの文字ではない。ともかく筆持ちて。墨を磨(す)らずに筆ぺんでもいいのです。自作の歌を毛筆で紙にしたためる。何と豊かな時間。

秋の夜に引き込まれゆき寝て仕舞ふ  山形県 松田 弘三(78歳)

たのしい、愉快な句ですね。秋の夜っていいなあと思って、つまり秋の夜を堪能しているうちに、その秋の夜に引き込まれていって気がつくと、気分よく、つまりここちよい眠りの底に落ちて安らかに寝息を立てておられた。という句。「仕舞ふ」の三文字がおもしろいですね。

秋の夜ベストセラーを読破する  埼玉県 戎 武子(78歳)

読書する人々が減っている。とはよくいわれることですが、私はそうは思いません。若い人でも熟年の人でも本を読むことが好きな人は昔も今も大勢おられます。この方は「ベストセラー」を一冊、秋の夜長に読破されたというのです。「読破」という日本語、いいですね。

秋の夜や昼間叱りし子等をふと  愛知県 重留 香苗(66歳)

さりげなく詠まれていますが、作者の気持ちがよく伝わってくる句です。日中叱りつけてしまったお子さんたち、それぞれのことを秋の夜長にふと想い返す。春の夜でも夏の夜でも、まして冬の夜でも成り立たないことが分かりますね。

秋の宵ひとり赴任の飯支度  福岡県 長野 政明(68歳)

単身赴任の方は世の中に無数におられます。ひとり男性が食事をしつらえる。という俳句は無数にあります。「独り飯」という句も多いのです。この句、「秋の宵」と「飯支度」という二つの言葉が響き合って、作者の想いが過不足なく伝わってくるのです。季語の力ですね。

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