TOP新着情報2022年 > 「鉄文(てつぶん)」文学賞の授賞式を開催しました

新着情報

「鉄文(てつぶん)」文学賞の授賞式を開催しました

2022年12月22日

鉄道をテーマにした短編小説を募集した「鉄文(てつぶん)」文学賞。12月3日(土)、埼玉県大宮「鉄道博物館」にて授賞式を開催しました。 

受賞者のみなさまに加え、最終選考委員のひとり・滝口悠生様にご出席いただきました(同じく最終選考委員の温又柔さんも出席予定でしたが、体調不良により欠席となりました)。

滝口様には、各作品の選評や選考委員を務めた感想、また「鉄道と創作」についてもお話を伺いました。鉄道をテーマに執筆することの魅力として、「鉄道と関わらずに生きている人はいない。鉄道が少ない地域で暮らしている人なら、その不便さもまた鉄道と関係のあること。同じ“鉄道文芸”でも、そこに出てくる鉄道はすべて違う現れ方をしている。それは、それぞれの人と鉄道とのかかわり方の違いということ」と、鉄道の多様さや、「語るもの」であるという小説の本質にも触れながらお話しいただきました。


また、受賞者のみなさまには表彰状を授与、スピーチにて喜びの言葉を語っていただきました。

『鉄道ダイヤ情報』編集長賞授賞 水叉直様

もともと普段からおじさんがすごく好きで、大阪では「おっちゃん」と呼ぶのですが、戦っておられる生き様やなにかを守っておられる姿にいつも魅力を感じています。そんな「おっちゃん」の魅力を描いた作品を評価いただいて光栄です。
私の将来の夢は、小説家になることです。子どもじみたことを言っていますが、おかげで楽しく毎日生きています。子どものような夢を大人が持っていてもいいと思います。その方がきっと楽しいと思います。応援いただけたらうれしいです。

『散歩の達人』編集長賞受賞 スズキ与太郎様

文学賞に応募したのはこれが初めてでした。今までは書いても書いても自分が納得するものが書けず、応募に値すると自分で思えないものばかりだったのですが、「鉄文」「鉄道文芸」という言葉にすごく惹かれました。特に「文芸」という言葉が私にとって救いになりました。私はもともと落語が好きなのですが、これも「芸」でいいんだと思えて気が楽になったんです。語り芸でいいんだなと思った時に、この作品の語り口が決まりました。この作品は誰に向かって語っているのかがひとつの肝になるので、みなさんにも読んで考えてみていただきたいです。
この作品を作家の先生方に評価いただいたということは、すべてを肯定していただいたようなうれしさがありました。これまでかかわったみなさんに語りかけるつもりで、今後も書き続け、語り続けたいと思います。みなさんに感謝していますし、創作の背中を押してくれた妻にも感謝しています。

大賞・『旅の手帖』編集長賞受賞 やすざわこうじ様

私は高知県高知市でゲストハウスをやっているので、『旅の手帖』編集長賞というのが、僭越ながら自分の置かれている境遇とリンクしてうれしく思いました。
作中で登場する魚梁瀬は高知市から車で3時間ほどかかるところで、遠いのでみなさん行きたがらず、ゲストハウスのお客さんに馬路村(の魚梁瀬地区)をどう紹介しようかいつも悩むのですが、「森林鉄道が走っていたんだよ」と言うと行ってみようかなと思ってもらえることがあります。今回の受賞で、より自信を持って魚梁瀬を案内できると思いました。
実は応募の1カ月前まで題材が決まっていなかったのですが、魚梁瀬に住んでいる友人から来てみないかと言われて取材も兼ねて泊まりに行きました。その帰り、夕日がダムに差し込んでキラキラと輝く様子を見て、森林鉄道が走っていた頃はさぞ綺麗だったろうなと思いました。そこで帰るのをやめ、夕日の明かりで原稿を書き始めたくらいインスピレーションを得た場所でした。作品は1~2週間くらいで一気に書いたのですが、魚梁瀬の美しい風景が作中で誇張されているということは全くなく、本当に美しいところです。作品を読んでくださったみなさま、そして鉄文プロジェクト関係者のみなさまに感謝申し上げます。ありがとうございました。


また、最終選考会での議論をまとめた選考会レポート記事も「トレたび」にて配信中。授賞作だけでなく、最終選考に残った9作品について言及されていますので是非ご覧ください。