TOP交通新聞ニュース2022年 > JR四国 2代目「伊予灘ものがたり」4月2日デビュー

交通新聞ニュース

JR四国 2代目「伊予灘ものがたり」4月2日デビュー

2022年3月11日

 JR四国は4月2日、観光列車「伊予灘ものがたり」2代目となる新車両の運転を開始する。

特急形キハ185系を改造したキロ185形(1、3号車)、キロ186形(2号車)の3両編成で、

全車グリーン車。3号車には貸切専用グリーン個室「Fiore Suite(フィオーレスイート)」が新設された。

 編成の外観と1、2号車の内装は初代車両のイメージを継承しつつ、

夕日に一層映えるメタリック塗装の採用や、座席の大型化による快適性向上など、

随所に「ワンランク上」への進化が感じられる。

JR四国特集①「伊予灘ものがたり外観・3号車側」(鈴木撮影).JPG

観光列車「伊予灘ものがたり」2代目の外観

(交通新聞社撮影©交通新聞社)

 

 伊予灘ものがたりは、アテンダントが乗務し、車内で食事が提供される同社初の本格的観光列車(ものがたり列車)として、2014年7月、予讃線松山―伊予大洲・八幡浜間(下灘経由)に登場した。

 車両は一般形キハ47形を改造したキロ47形2両編成で、全車グリーン車の普通列車。

 土曜日・休日を中心とした設定日に上下4本運転され、松山発伊予大洲行きは「大洲編」、伊予大洲発松山行きは「双海編」、松山発八幡浜行きは「八幡浜編」、八幡浜発松山行きは「道後編」と、「ものがたり」にちなんだ列車名が付けられている。

 列車は車窓に広がる伊予灘の眺め、アテンダントのサービス、地域のサポートレストランによる食事、沿線の人たちの「お手振り」をはじめとする熱いおもてなしが評判となり、昨年度末までの累計乗車人員約14万5000人、20年度までの平均乗車率約90%の人気列車に成長したが、初代車両は老朽化により、昨年12月27日の運転をもって引退した。

 ■「ワンランク上」へ

 同社では、列車の高い人気や、沿線地域の多くの人たちにも愛されていることなどを踏まえ、2代目車両の導入を決断。特急形車両を使用し、列車種別も特急とすることから、「ワンランク上」を目指すこととした。

 コンセプトは従来の「海を魅せる(伊予灘)」「ゆったりとした時間」「柑橘(かんきつ)」に加え、「レトロモダンな車内で大切な人と過ごす、上質な非日常空間」を追加。内外装のデザインは、初代車両をはじめ同社車両の多くを手掛けてきた松岡哲也鉄道事業本部お客様サービス推進室デザインプロジェクト担当室長が行った。

 外観は初代車両のイメージを継承し、伊予灘に沈む夕日をあしらったシンボルマーク、茜(あかね)色と黄金(こがね)色をベースとしたカラーリング、側面の「ヱ雲(えぐも)」デザイン、丸形前照灯などを採用。塗装は同社車両で初の全面メタリックとし、正面のシンボルマークは背面にLEDランプをセットして夕闇に浮かび上がるようにした。

 

 JR四国特集④「伊予灘ものがたり1号車室内、白」(鈴木撮影).JPGJR四国特集⑤「伊予灘ものがたり2号車室内、橙」(鈴木撮影).JPGJR四国特集③「伊予灘ものがたり3号車カウンター」(鈴木撮影).JPG

(左から)1号車「茜(あかね)の章」、2号車「黄金(こがね)の章」、3号車「陽華(はるか)の章」

(交通新聞社撮影©交通新聞社)

 

 ■洗練された一般席

 3両編成のうち、下り方1号車「茜(あかね)の章」、2号車「黄金(こがね)の章」は一般のグリーン席で、号車の愛称や開放的な室内イメージを初代車両から踏襲。天然木の内装材は初代車両同様、1号車はこげ茶色のウォールナット材、2号車はやや明るいチーク材を使用している。

 1号車(定員27人)は、海側に4人用ボックスシート3組と展望シート5席、山側に2人用対面シート5組を配置した。座席は緑色。2号車(23人)は、海側に展望シート7席(うち1席車いす対応)と2人掛けペアシート3組、山側に2人用対面シート5組を配置。座席は黄緑色。

 両号車とも、窓上に愛媛県を象徴するミカンをモチーフとした電球型照明、窓間の柱部分に障子をイメージした壁面照明を設置。天井の間接照明と壁面照明は調光機能があり、シーンによって、サンセット(橙色)、グリーン、ピンクなど色を変えることができる(壁面照明はサンセット色のみ)。全体的に落ち着いた雰囲気の中、初代車両より一層洗練された仕上がりとなっている。

JR四国特集⑥「伊予灘ものがたりミカン型照明」(鈴木撮影).JPG

窓上に愛媛県を象徴するミカンをモチーフとした電球型照明を設置

(交通新聞社撮影©交通新聞社)

 

 ■高揚感あるグリーン個室

 3号車「陽華(はるか)の章」は、車両の運転台寄りほぼ半分が新設のグリーン個室「フィオーレスイート」。「大切な人と過ごす時間と空間」をコンセプトに、アールデコを基調としたクラシカルかつ高揚感のある造りで、半円形のテーブルを囲むように、2人掛けソファーシートが海向きに4セット配置され、2~8人の貸切で利用できる。

 チェリー材による暖かな色合いの内装材には、「フィオーレスイート」シンボルマークの桜を小紋として全体にあしらった。天井照明は光が降り注ぐイメージ。2段造りのテーブルは、上段を鏡面仕上げとして空が映り込むようにし、室内と海、空との連続感を演出。上下段間には調光機能付き照明を組み込んだ。

 3号車の残り半分はギャレーとカウンター。ギャレーの新設で車内サービスのバックヤード機能が大幅に向上し、温かい食事の提供が可能となったほか、従来は数量限定だった道後編のアフタヌーンティーセットが、予約者全員に出せるようになった。ギャレーから距離のある1号車デッキには、サテライトカウンターを設けた。

 ギャレーの壁面(フィオーレスイートへの通路)は鏡張りで、沿線の駅で「お手振り」などのおもてなしをする人たち自身の姿が映り、楽しんでもらえるようにしている。

 ■快適性や業務環境が向上

 種車のキハ185形の構造を生かし、編成両端の1、3号車とも前面展望が楽しめる。前面展望は車内Wi―Fiにより、スマートフォンで見ることも可能。各座席にはUSB電源を用意した。空調は全車換気機能付き。トイレは3号車に男女共用と女性専用、2号車に多目的トイレを設けた。各トイレ内手洗い鉢、2号車の洗面鉢は砥部焼を使用している。

 編成定員は58人(初代車両は2両で50人)。3両化によるスペース増加分は、フィオーレスイート(定員8人)分のほかは、1、2号車の座席大型化、ギャレーなどバックヤード機能の充実に活用し、乗客の快適性、アテンダントの業務環境の向上を図っている。

JR四国特集②「伊予灘ものがたりフィオーレスイート室内」(鈴木撮影).JPG  

シンボルマークの桜を小紋として全体にあしらった「フィオーレスイート」のイメージ

(交通新聞社撮影©交通新聞社)

 

 ■乗車料金と食事

 乗車には運賃のほか、特急グリーン料金が必要。合計額(1、2号車)は

松山―伊予大洲間3670円、同―八幡浜間4000円。

「フィオーレスイート」は利用人数分の運賃、特急料金と

グリーン個室1室料金2万8000円が必要となる。

 食事(要予約)は従来と同じく、4軒の「サポートレストラン」が各編を担当。

 ■内容と価格

▽大洲編「朝のひとときを味わう旬彩モーニング」(ヨーヨーキッチン!、3000円)

▽双海編「内子杉の木箱で彩る和杉膳(わさんぜん)」(レストランからり、5500円)

▽八幡浜編「門田フレンチ~伊予灘ミニコース~」(レストラン門田、同)

▽道後編(アフタヌーンティー)「伊予灘の菓織箱(かおりばこ)」(プチ・パリ、3500円)。