日本列島にはダムを建設するために造られた鉄道が多数ある。人気の観光路線として知られる黒部峡谷鉄道は黒部川水系の発電所工事のために敷設されたものであるし、JR只見線の会津川口~只見間は田子倉ダム建設のために、また、大井川鐵道井川線のアプト式区間は長島ダムとのかかわりの中で誕生した。話題の八ッ場ダムとJR吾妻線にも60年にわたる複雑な歴史がある。本書は、そんなダムと鉄道の密接な関係を、写真や建築資料とともに紹介する異色の現地レポートである。
第1章 黒部ダム―黒部峡谷鉄道・関西電力黒部専用鉄道
「乗客の安全は保証しません」から、年間100万人乗車のトロッコ列車へ。
第2章 白岩砂防ダム―立山砂防工事専用軌道
崩落カルデラ内に潜む、知られざる610ミリゲージの38段スイッチバック。
第3章 長島ダム・井川ダム―大井川鐵道井川線
水没・廃線の危機から発想転換、「アプト式」新設でよみがえった観光路線。
第4章 奥只見ダム・田子倉ダム―JR只見線
電源開発の「発電所建設用専用鉄道」から、国鉄に移管された政治路線。
第5章 佐久間ダム―JR飯田線
巨大ダム建設で付け替えられた「渡らずの鉄橋」など、18キロに及ぶ迂回区間。
第6章 八ッ場ダム―JR吾妻線
昭和27年以来、「ダムに沈む」とされている、吾妻峡、川原湯温泉と線路の60年史。
第7章 消えた「ダムと鉄道」
糖平ダム-国鉄士幌線
大夕張、夕張シューパロダム-三菱石炭鉱業大夕張鉄道・下夕張森林鉄道
小河内ダム-東京都専用線小河内線
小牧ダム-庄川水力電気専用鉄道
武田 元秀(たけだ もとひで)
1960年、福島県郡山市で建設業者の長男に生まれる。県立安積高校、早稲田大学法学部卒業。五洋建設、朝日新聞社勤務を経てフリー。記者時代は大津支局で滋賀県警担当として信楽高原鐵道列車衝突事故、新潟支局でC57180号機の復活や、奥只見・大鳥発電所増設工事を取材。名古屋、東京本社で旅行・情報関連紙面の編集デスクなどを務めた。本書が初の「著書」となる。
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